そんなんできるか!

ちょっとお気に入りのボイストレーナーのブログを紹介しつつ、それからは少し脇道に逸れたお話を。
なのでトラックバックは無し。

http://vocallesson.seesaa.net/article/117558491.html


Q: 喉を開いて歌うと高音が歌えなくなってしまうのですが、よい解決方法はありますか?


まずは、喉を開いて歌うとはどういう事かを定義する必要があると思います。
多くの場合、喉頭を下げ、軟口蓋を持ち上げる事を指している事が多いと思います。
(以下略)


ボイトレに関わる多くの人が、こういう「喉を開く」のような、抽象的な指導用語を、定義をはっきりさせずに使っているのが現状で、それは問題だよなあ…と常々思っています。


この「喉を開く」に限らず、「腹から声を出す」だとか「頭のてっぺんから声を出す」だとか「よく響かせる」だとか…
素人にはとてもじゃないが言ってる意味がわからないですよね。
ていうかありえないよね、実際。
腹とか眉間とか頭頂部から本当に声が出せたら、その人、何らかの妖怪ですから。


私、こういう「抽象的な指示」指示って結構嫌いなんです。
抽象的な指示って、上手くはまると凄い効果があるのですが、往々にしてそうはならないですし。
むしろ、指導される側が指示の意図とかを捉えきれず、全然別方向に行ってしまいやすいです。


「喉を開く」とかのような声を出す身体の状態だけでなく、声そのものの状態を示す言葉、
「喉声」「鼻声」「通る声」「響く声」「かたい声」…
なども、結構時と場合によって意味の変わる曖昧な言葉というか、ジャーゴンというか…。



○何故こんなに抽象的なのか


1.ある程度抽象的な方が、実際の練習では何かと便利
2.発声法は、上手く具体的に言語化・文章化出来るものでは無いので、抽象的にならざるを得ない
3.知識不足・技量不足で具体的なことが言えず抽象的になってしまう


など、結構、抽象的に言わざるを得ない理由も多いんです。
私がジャーゴンになっているときは間違いなく3ですが。


1の例を挙げると、仮に
「軟口蓋を引き上げつつ喉頭を下げて!」
「あなたの声はアタックがやや強すぎ、不規則なピッチ変動が起こりますね!」
とか言われたとしたら、発声についてある程度の知識と経験を持っている人でないと、ちんぷんかんぷんな感じになってしまいますね。
対して、
「喉を開いて!」
「あなたの声はちょっと『かたい声』に聞こえるよ!」
という指示だと、そういった知識や経験が少なくても「なんとなくこんな感じ?」という感じでできてしまうことがあります。


抽象的な指示って、相手に「勉強」させずともある程度「雰囲気」で通じるので、手っ取り早くて便利なんです。
まあ、抽象的な言葉に頼りすぎるのもどうかと思いますが。


2については、発声という非常に複雑な事象を説明するためには、抽象的な言葉を使ってある程度の解釈の「幅」を残したり、イメージに頼ったりせざるを得ない場合があります。
発声に関わる声帯の筋肉やブレスの圧力、それらを支える筋肉の働き、随意筋と不随意筋の関係…
それら全てを「具体的に」説明することは、ほぼ「無理」と言ってしまって構わないかと。


言葉に解釈の「幅」があると、言葉のニュアンスを取り違えてしまって、禅で言うところの「魔境」状態になってしまう危険性はあります。
しかし、その「幅」が無いと、ボイストレーニングの概念は、なかなか言葉にすることが難しかったりするんです。



○抽象的な言葉を前にしたら、気をつけるべきこと


指導する側は、出来る限り、それが「具体的にどういうことか」「なぜそれが必要なのか」を説明できるようにしましょう。
やっぱり「具体的にどういうことなのか」が伝わった方が指導の効率がいいですし、言葉の意味を勘違いして「魔境」入りしてしまう可能性も減ります。


指導される側は、
・「何故そうするのか」
・「この人は一体何をさせたいのか」
・「この人の言っていることは、具体的にはどういうことなのか」
ということなんかをたまには考えましょう。
小難しいこと考えるのは億劫ですが、上達への大きな一歩ですので。


…「喉を開いて!」一辺倒の指導(その上、「喉を開く」ことの「メカニズム」を誰にも教えてもらえず)の結果、間違った「喉の開き方」を必死で行い、練習すればするほど逆に「喉声」になってしまっていた過去の自分のような人は、できればいなくなって欲しいなー、と思いつつ、今回の記事を終わりにしようと思います。


参考↓
この方法なら伝わる!−立教大学グリークラブ旧ホームページ
http://www.rikkyo.ne.jp/sgrp/glee/jisyu-situ/gakuten6.html