「明瞭な発音」を手に入れるためのボイストレーニング


前回、「滑舌が悪い」という場合には
1.発音が不明瞭(苦手な子音・母音がある)
2.文章として読むと詰まる(言葉のつながりなどに問題がある)
という2パターンがある、というお話をしましたが、今日は1の方を解決するためのボイストレーニングを紹介します。



○「発音が不明瞭」の2パターン


「発音が不明瞭」という場合を詳しく考えてみますと、
1.子音に問題がある
2.母音に問題がある
の2パターンが考えられます。
まあ、両方同時に発症…という場合もありえますが。


ざっくり母音と子音というものについて説明しますと、
・母音→歯や唇や舌によって遮られない、声帯で鳴った音を口や喉で共鳴して整えたもの
・子音→歯や唇や舌によって空気の流れが遮られることによって鳴る音
ということになります。



○1.子音に問題がある


子音に問題があるということは、歯や唇や舌の動きに問題があるということです。


子音に問題があって滑舌が悪くなる例を考えてみると…


・「ひ」と言っているつもりでも「し」に聞こえてしまう
難しい言葉で言うと、HもSも「摩擦音」に属していて、非常に似た音です。
ただ、Hが「声帯の摩擦音」(もしくは、口腔での摩擦音)なのに対してSは「歯の摩擦音」という違いがあります。
このような場合、舌の置き場や口の開け方が悪いので、Hを出すつもりでもSの「歯の摩擦音」が鳴ってしまい、「ひ」と「し」の区別がつけられなくなっているわけです。
舌の位置が歯に近くなってしまうと、「歯の摩擦音」が出てしまいやすいので、舌の位置に注意して発声してみましょう。
また、上下の歯の距離を離すことでも「歯の摩擦音」は出なくなるので、あごの開け具合にも注意してみましょう。
逆に「し」が「ひ」に聞こえてしまう場合は、「歯の摩擦音」を強く鳴らすことができていない、というのが原因かと。


・「の」が「ど」に聞こえてしまう
Nは「息が舌に遮られて鼻に通ることでなる音」、Dは「上の前歯・歯茎につけた舌を息と同時に離すことによって鳴る破裂音」です。
このNとDは、子音の鳴る仕組みは全然違うのですが、舌の動きは似ているため、しっかり舌を動かさないと混ざってしまいます。
このような場合は、舌でしっかり息を遮れていないので鼻に息が通らずにNが鳴らないか、鼻に息を通す時間が短すぎて十分にNが鳴らなくてDに似た音が鳴ってしまうという状態が考えられます。


・「ど」が「ろ」に聞こえてしまう
Dは先ほど説明した通り「破裂音」、歯茎より内側の部分(硬口蓋)を軽く弾くことで「弾き音」のRが鳴ります。
この2音も、「舌を上・前方につけて離す」という動きが似ているのですが、弾く力が違います。
このような場合、舌が上の歯や歯茎を弾く力が弱いので、「破裂音」のDではなく「弾き音」のRに聞こえてしまうのでしょう。
またはしっかり舌で息をせき止められていないので「破裂」しないとか、舌の動きが遅すぎて「破裂」しないとか、そういう可能性も考えられます。


などなど、「歯や唇や舌」が正しく動かないと、正しく子音が出ないのです。
なので、子音に問題があって滑舌が悪い場合、
・「自分の発声の癖」と「正しい子音の発音の仕方」を知る
というのが非常に重要です。
間違った「歯や唇や舌」の位置を、一つずつ直していきましょう。


正しい子音の出し方については、下記のサイトを参照すると良いと思います。
「OCM式日本語50音」発音
http://www.collegium.or.jp/~sagitta/ocm_homepage/html/kouza_backnumber/kbn45.html


まずは、「子音だけ」でも明瞭に発声できるように練習するといいです。
また、「自分で不明瞭だと思う子音」を長く・強く発音する練習とかもお勧めです。
「歯や唇や舌」に変な癖が無くても、子音を出す時間が短すぎたり、子音を出すための運動に力が足りなかったりするせいで、不明瞭な発音になってしまう人ってかなり多いので。
特に小声の人や、暗い感じの声の人、幼い感じの声の人にはそういう場合がすごく多いです。



○2.母音に問題がある


あんまり「母音の出し分けが上手く行って無くて滑舌が悪い」という話は聞いたことがないのですが…


母音についても結局は、
・「自分の発声の癖」と「正しい母音の発音の仕方」を知る
ということが重要です。


母音がどうつくられるかというと、口の中の空間の形や容積が変化することによって響き方が変わり、声帯で鳴った音が「あ」になったり「い」になったりします。
なので、「母音は、主に口の開き方+舌の奥の方の動きによって出し分けられる」ということをまず頭に置いてください。


母音の悪い癖の例を考えてみると、例えば、「何かどの母音も微妙に『え』っぽく聞こえる」声の人っていると思います。
今自分でやってみたら、非常に小悪党風味(笑)。
そういう人の場合は、口の開きが縦に狭く横に広めで、口角が落ち気味なため、どの母音も微妙に「え」が混ざってしまうのです。
または、舌が奥の方で縮こまってしまって、素直な「あ」が出せない状態になっているか。


同様に、「何かどの母音も微妙に『あ』っぽく聞こえる」声の人もいますね。
なんかこう私の偏見で言えば、ギャル・ギャル男の皆さんの声ってそんな感じが多いかな。
口を緩く開きっぱなし、舌は平静の位置からほとんど動かさない、という状態で喋るので、なんか舌足らずな感じがして、頭悪そうなことこの上ない喋り方になります。


このように、「母音の癖」は、どちらかというと「滑舌」よりは「声の印象」に関わってくる気がしますが、知っておいて損は無いかと。
「母音の癖」を修正するためのトレーニング方法は、下記のエントリでどうぞ。
発声についての色々な問題が解決するかもしれない、「母音」のボイストレーニング
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090406/1239024520