ASIAN KUNG-FU GENERATIONに学ぶ、「母音の使い分け」

さて、今回は、前回までと内容を大きく変えて、「○○に学ぶ」シリーズを書いてみます。


ASIAN KUNG-FU GENERATIONを最近またよく聞くようになって、「やっぱり独特な発音をしているなー」と 思いました。
計算でやっているのか本能でやっているのかはわからないけれど、非常に面白い「母音の使い分け」をしています。
その「母音の使い分け」が音楽的に色々な効果を生んでいて、「アジカンらしさ」を生んでいるのではないかと、最近考えていました。


今回のテーマの「母音の使い分け」ですが、「歌唱力の向上」に役立つのはもちろん、マスターすれば「声の印象」や「出しやすさ」をコントロールできるようになります



○「母音の使い分け」による効果


1.母音を使い分けることで、「声の印象」を操れる


それぞれの母音の響きについて説明すると、


あ→声帯で鳴った音をそのまま響かせた感じ
い→声に含まれる「低音成分」をカットした感じ
う→声に含まれる「高音成分」をカットした感じ
え→「あ」と「い」の中間的な響き
お→「あ」と「う」の中間的な響き


という仕組みで、母音の出し分けが行われています。
だから、「い」系統の声は明るめに、「う」系統の声は暗めに聞こえます。


また、表情との絡みで考えると、大きく口を開いた「あ」の時の顔は、「う」系統の顔より活動的な感じがしますよね?
声もその通りの印象になるので、「あ」系統の響きは「素朴さ」とか「活発さ」を表現するのに適し、「う」系統の響きは「ためらい」とか「落ち着き」とかを表現するのに向いているのかもしれません。
「い」母音は口角を表情筋で引き上げて出す場合が多いですが、その場合は「笑顔」を連想させる明るい響きになる場合と、筋肉の力みによる「緊張」を連想させる響きになってしまう場合と、両方の可能性が考えられます。


なので、例えば「明るさ」などを強調したければ、「あ」母音や「い」母音を混ぜた声(どの母音でも口を大きく開き気味にする、または口角を上げ続ける)を出すことで、印象を明るくすることができます。
逆に、「落ち着き」や「大人っぽさ」などを演出したければ、「お」母音や「う」母音に近い発声(唇を縦に開ける意識を強くし、横に開かないようにする)で全ての母音を発声すればいいのです。


2.「声の出しやすさ」を操れる


以前紹介した
PodCast by SLS master instructor John Henny−桜田ヒロキ ヴォーカルスタジオ
http://vocallesson.info/jhpodcast/
の「Narrowing Vowels」というレッスンによれば、

口を横に拡げるような「大きな母音」は、大きな母音はチェストヴォイスを押し上げ、シャウトをするような特性があります。

ということです。
これを利用すると、高音域で、少し「う」母音を混ぜることで楽に高音を出したり、チェストボイスのシャウトっぽいニュアンスを出したければ「あ」母音を混ぜ気味にする、などの方法が考えられます。



○実例


まあ、アジカンの曲を聴いて貰えばだいたいわかると思うのですが、ボイトレ的に解説してみますと…



サビの頭に「むき出しで走る夕」(2:13)という所がありますが、ここで
「はしるゆう」と「はしるよう」の中間くらいの音色で発音している
のがわかるでしょうか?
次の「君は言う」も同様に、「きみはゆう」と「きみはよう」の中間くらいで発声しています。
こうした方が発声が楽ですし、音色の変化が抑えられるのでメロディーラインがとても滑らかに聞こえます。



「僕の両手にはこれだけだよ」(1:28)ではほとんど「お」の口で出すことで「抑制された感じ」「溜め」を作り、その後の「革命を!」で一気に開く(「あ」系統の母音を混ぜている?)ことで爆発!させています。
その後の「遠く」のシャウトでも、「お」母音では本来ありえないくらい口を大きく開いています(これもたぶん「あ」系統の母音を混ぜている)。
サビ終わりの「わかったよ」では、「た」をはっきりした「あ」母音にすると明るくなってしまったり強くなってしまったりするので、「え」母音を混ぜることで曲のエネルギーの収束に合わせた音色にしているんじゃないかなと思います。



この動画については「どこでどう」という話ではなく、全体を見て「ある程度強めに鼻にかけた、『同じような響き』でずっと歌い続けている」というところに注目してみて欲しいです。
詞や曲のテーマ的に、あんまり「メリハリ」とか「起承転結」とかが強く出るわけにはいかないので、このような歌い方になっているのでは、と思います。
「メリハリが無い」とかいう悪い感じではなく、「気持ちいい温度でずっと流れ続けている感じ」というか「クルージング感覚」というかを私はこの歌い方から感じるのですが、どうでしょうかね?



○「母音の使い分け」をするために


「母音」についての基本的なボイストレーニング方法は、過去に掲載しています。
発声についての色々な問題が解決するかもしれない、「母音」のボイストレーニング - 烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090406/1239024520
これをやっておけば、母音を自由にコントロールするための力もつきますし、母音についての理解も深まるのではないでしょうか。


あとは、上に既にリンクを貼ってありますが、
PodCast by SLS master instructor John Henny−桜田ヒロキ ヴォーカルスタジオ
http://vocallesson.info/jhpodcast/
の「Narrowing Vowels」というレッスンでは、「歌の中でどう母音を扱うと歌いやすいのか?」ということを詳しく説明しています。