ボイトレ的に考える、「原稿」との付き合い方


今日書く記事は、ライフハックとして使ってもらえるかな?


スピーチ、プレゼン、業務連絡、館内放送…
そのように、人前で声を使うときに、「原稿」を使わなければならない場合って多いと思います。
原稿と呼ぶほど大層なものでなくとも、ちょっとしたメモを見ながら話したり…。
そんな時に、ちょっとしたことに気をつけるだけで、かなり劇的に声の印象を良くすることができるのです。



○原稿の「高さ」で分類する、3つのスタイル


さて、今回は、状況を「原稿の高さ」によって3分したいと思います。
と、言うのも、原稿の高さによって姿勢が大きく変化し、それによって声も大きく変化してしまいかねないからです。


大きく3つに分けると…
・高く持ち上げる
→原稿を目の高さまで持ち上げて保持し、その状態で発声する
・低めに持ち上げる
→原稿を胸の高さ程度まで持ち上げて保持し、発声する
・机に置く
→原稿を机などの上に置き、そのまま発声する



○原稿を「高く持ち上げる」場合のメリット/デメリット


この方法のメリットは、
・背筋を伸ばし、胸を張った姿勢を維持しやすい
・視線を高い状態のまま維持しやすい
・「良い姿勢」「高い視線」を維持したままでも、原稿が見やすい


デメリットは、
・「話し手」と「聞き手」の間を原稿が遮ってしまい、音が遮られてしまうことがある
・「原稿の壁」のせいで、聞き手とアイコンタクトができず、こちらの「表情」が伝わりにくいし、聞き手の様子を伺うこともできない
・「原稿の壁」のせいで、「音が飛んでいくイメージ」を持ちづらい


このスタイルは、「良い姿勢」や「高めの視線」を維持しやすいので、原稿を持っても「普段通りの声」が出せるのが最大の特長ですね。
力強い声で、はっきりと、正確に原稿を読み上げたい…
そんなときには、このスタイルが有効です。
原稿ガン見でいいので、大きな声ではっきり正確に細かい情報を伝えたい!というときには、私は大体こんな感じで読みますね。
例えば、本の内容をそのまま読み上げたり、細かいデータを読み上げたり、手元の情報との「確認」「チェック」をしながら読むとき、聞き手が「返事」をしてくれるときなど。


ただし、弱点として、原稿が「壁」になってコミュニケーションを阻害してしまう可能性があります。
聞き手の反応に合わせて喋ったり、聞き手の様子を伺いながら喋ったりすることが難しいので、「一方的な感じ」を与えてしまう危険があり、対話形式には向かないスタイルです。
また、「ある程度、一方的な感じを与えても構わない」というような場面でも、
・相手が実際には見えなくとも、しっかり聞き手、聞き手との距離や位置関係をイメージして声を出す
・声が聞き手に向かって、原稿を「突き抜けて届く」「乗り越えて届く」というイメージを持つ
などの工夫をする必要があるでしょう。
また、マイクなどを使う場合は、当然マイクと口の間を原稿で塞いでしまわないように注意する必要があります。



○原稿を「机に置く」場合のメリット/デメリット


この方法のメリットは、
・「話し手」と「聞き手」の間に「壁」ができず、コミュニケーションが取りやすい
・両手が空くので、身振り手振りがしやすく、同時に作業をしたりすることもできる
・上達すると、聞き手に「原稿の存在」を感じさせないことができる


デメリットは、
・原稿を見るために下を見すぎると、声質も見た目も悪くなり、自信が無いように感じられてしまう
・姿勢を良くしたり、聞き手をしっかり見ようとすると、原稿が見難い
・原稿と聞き手を両方しっかり見ようとすると、視線の移動が大きく、非常に疲れやすい


このスタイルは、聞き手との間に「壁」を作らず、表情や手振りによる「非言語コミュニケーション」も活用でき、とても「伝える力」「訴える力」「繋がる力」が強いのが特徴です。
また「原稿頼み」「原稿通り」というイメージを持たれにくいので、そこも聞き手に訴えかけるポイントですね。
講演、演説、講義、プレゼン…などの「情報」だけでなく「メッセージ」や「エモーション」を伝える場合、「暗記+アドリブ」が基本ですが、「原稿あり」でやるならこのスタイルがベストかも?


弱点としては、どうしても「聞き手を見るか原稿を見るか」という問題が常につきまとうこと。
両方をしっかり見るのはけっこう難しいのですが、かといって片方に視線が集中してしまうとろくなことになりません。
特に、原稿に視線が集中してしまうと、声は落ちるし姿勢は悪くなるし意識は聞き手から離れるし、せっかくの「伝える力」がゼロになってしまいます。
なので、
・できるだけ原稿を見ないで済むように準備しておく
・視線が落ちた時も、声の飛ぶ方向のイメージは変えず、高い状態をキープする
・視線が落ちるときに姿勢が崩れないよう注意する
という工夫が必要です。



○原稿を「低めに持ち上げる」場合のメリット/デメリット


この方法のメリット/デメリットをまとめると、
・練習して慣れれば既に紹介した2つのスタイルの「良い所取り」ができるが、慣れないうちは「駄目な所取り」になってしまう
という感じです。


しっかり練習して1度マスターしてしまえば、
・姿勢も崩れず
・目線も高い状態を維持し
・聞き手をしっかり見ながら
・原稿も楽に見られて
・聞き手に「表情」をしっかり見せることができ
・声の方向もイメージしやすく

という感じで、いいことずくめな感じになります。


やや根気が要りますが、ひたすら「低めに持ち上げた原稿を、視線をあまり移動させずに読み上げる」練習をしましょう。
視線を聞き手側に向けたときには視界の端で原稿が読めるように、視線を原稿側に向けたときには視界の端で聞き手を感じられるように意識しましょう。
とにかく「慣れ」が必要なので、時間をかけて練習した上で、本番の場数を踏むしかありません。


ちなみに、私が教育実習に行ったときには、基本的にこのスタイルで教科書を読みながら授業をやってましたね…。
とにかく常に生徒を「見続け」つつ生徒に「見られ続け」ないと授業にならないのですが、一応先生として教科書などを読むときには間違うわけにもいかないわけで。
そんなちょっと難しい状況の中で、このスタイルは自然と身についていました。
合唱でも、楽譜の高さの基本は「胸の前程度で地面と水平になるくらいに寝かせ、決して声の軌跡を楽譜で遮ったり、観客から見て顔が隠れてはいけない」というような感じです。


とにかく、幅広い状況で有効に使うことができるスタイルなので、練習してみてください。



○関連エントリ


「どうして聞き手をしっかり見る必要があるの?」
「声・音が飛んでいくイメージってどういうこと?」
などと思った貴方に↓


・あなたは居酒屋で店員を「一声」で呼べるか・・・声の「方向」と「距離感」‐烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090313/1236871219