声が伝えるもの…ロッテ西岡選手のヒーローインタビューから感じたこと


matasaburo氏の記事を読ませてもらって、感じたことを少しだけ書きます。


・声の力(お口の恋人問題に寄せて)‐服従するが果たさない
http://d.hatena.ne.jp/matasaburo/20090930/1254279945


ロッテの応援団関係の揉め事で話題になった、西岡選手のヒーローインタビューの感想を書いた記事です。


今回私が一番強く感じたのは「声の力」についてです。先にも触れたように、西岡選手はつとめて冷静に、過度に感情的にならないように語っています。しかし、映像をご覧になっていただくと分かるのですが、その声は、一貫して、微妙に震えているのです。私たちはその微妙な声の震えから、西岡選手の覚悟、緊張、怒り、悲しみ、ファンへの愛、チームへの思いなど膨大な情報を読み取ることができます(もちろん誤読を含めて)。

インタビューを私も見てみましたが、確かにそのような「膨大な情報」を私も感じることができました。
matasaburo氏は「声の震え」に注目していましたが、私もその「声の震え」から西岡選手の様々な想いを感じました。


さらに私が気になったのは、声を出す前の「溜め」が非常に大きいことですね。
言葉と言葉の「間」がかなり長く、普通なら区切らないようなところでも一呼吸置き、「えー…」という声が頻繁に合間に入り…。
心の底に溜まったものを、少しずつ、ほんの少しずつ汲み上げ、押し出して、それが外にゆっくりと広がっていくようなイメージを、西岡選手の喋り方から感じました。


聞いている私にとっても長く感じるくらいですから、喋る本人にとっては本当に長い時間に感じられるでしょうね。
一言一言を声にする前に、どれほどの逡巡があったか、想像するだけでも辛くなってきます。


…とても強い感情を持って喋るとき、声を出すには本当に大きなエネルギーが必要です。
私の師匠の言葉ですが、「横隔膜は人体で最も『正直』な器官の一つだ」という言葉があります。
心にもないことを「腹から声が出ている」状態で声に出すことは本当に難しいですし、作り笑いやウソ泣きをしても、横隔膜がろくに働かないせいで本物の泣き笑いとは似ても似つかないものになってしまうのです。
そして、本当に「心から声を出したい」と思ったときには、横隔膜が絶妙に働き、「体の奥の奥」「体の一番深いところ」から声が出ているような感覚になりますね。
そのような声が出たときの説得力というものは、どんな美しい言葉より、どんな明快な論理より、遥かに強い説得力を持ちます。


そんなとても強い「声の力」を、確かに西岡選手は持っている、と感じました。


コミュニケーション能力というのは、そうしたことを含めて自分の思いを表現する能力であるはずで、立て板に水のごとく上手に表現することなどは、コミュニケーションの成立においては、ほんの些末なことに過ぎません。そして、話者のメッセージに込められた思いを誠実に汲み取ろうとする意志もまたコミュニケーション能力の重要な要件であろうかと思うのです。


そうですね、人間は「言葉」以外にも、本当に様々な手段を使ってコミュニケーションしています。
その中でも、「声」というものは、本当に様々な情報を持っていると思います。
人は言葉を発明するずっと以前から、声自体が持つ様々な情報によってコミュニケーションをとってきたはずなんですが、言葉の便利さの中でそれを忘れがちなんでしょうね、私たちは。



「声の力」というものについて、この記事から本当に多くのことを考えさせられました。
このブログはボイストレーニングをメインに書いていますが、この「声の力」、
「思っていることを『声』で伝える、感じさせる力」
について、またこれから考えていきたいと思いました。