ひたすら大声を出させても、発声練習にはなりません!


・発声練習で過呼吸、6人搬送 代々木のゲーセン(産経新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100630-00000616-san-soci


はてブでこの記事を見つけて、「これはひどい」と思ったので発作的に書きます。


詳細不明なんですが、なんか、バイトの研修で、地下室で数十人で30分ほど「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などと大声で繰り返す「発声練習」が行われ、その結果、過呼吸などを起こして6人が搬送されたそうなんです。
…明らかに人災というか労災というか。


ブコメには、

それは発声練習とは言わん…。/ひたすら大声を出させる、無意味に思える重労働をひたすら集団で繰り返させる…洗脳の基本と言うかイニシエーション入門と言うか。研修(笑)

と書きました。
「発声練習と称して、なに無茶苦茶な事をやっているんだよ!」「こんな無茶苦茶なモノを発声練習と呼ぶんじゃねえ!」と、ちょっと苛っときてるわけです。
まあやらせた方も「発声」の「練習」をさせたかったわけではなく、「日本的な精神論的な何か」を求めてのこの事態なんでしょうが…。
そしてこういう「ひたすら大声」系の研修って、噂はよく聞くし、たまにそれっぽいのをチラ見してしまったりもするんだよなあ…。
「精神論」以上の効果は無いし、声にとっては「むしろ有害」なので、素人ボイストレーナーの私としては非常に暗い気分になってしまうのです。



○ひたすら大声を出し続けても、声はたいして大きくならない


まずダメなのが、ひたすら大声を出させても、効果が少ない上に声に悪いというところ。
効果より、圧倒的に害が多いです。
昔から体育会系社会では「叫べば叫ぶだけ喉が強くなるんじゃーい!」「喉を潰して、治って、その繰り返しで喉が強くなるんじゃーい!」みたいな迷信が根強いですが、これ根本的に間違ってますから。
だって声帯の音を鳴らす部分って基本「粘膜組織」なので、訓練とか超回復とかで強くなる類のものじゃないですから。
大切なのは声帯を「強さの決まっている、繊細な声帯という楽器をどう扱うか」ってところですから、ひたすら大声を出させても、声帯を傷つけるだけで何も「鍛える」ことができません。


「ひたすら大声を出し続けることで、腹から声が出せるようになるんじゃーい!」
という声があるかもしれません。
確かに呼吸の強さや安定は筋力によるものなので、ひたすら大声を出し続けると声が大きくなる…と思われがちですが、呼吸を強く安定させようと思ったら、ひたすら大声を出すより「声を出す前にしっかり身体をほぐして深呼吸」とかの方が効果が高くて健康的で効率的です。


あるいは、「ひたすら大声を出し続けることで、精神的に吹っ切れて大声が出せるようになるんじゃーい!」
という声があるかもしれません。
これもやっぱり、ひたすら大声を出させるより「あいさつをする対象との距離・方向・空間から考えて、どのくらいの音量が必要なのか」「対象にどの程度の音量を届けたいのか・どんな印象を与えたいのか」…などをしっかり考えさせたり、その辺の哲学を伝えたり、相互評価をさせてみたりすることで、「声についての意識を高める」という方向性でやったほうが、効果も出やすいし、「あとにつながる」練習になると思います。


あるいは、「ひたすら大声を出し続けることで、持久力がついて、長時間大声が出せるようになるんじゃーい!」
という声があるかもしれません。
が、「変なところを変に力ませない、自然な発声」で「常識的な音量」で「常識的な時間」であれば、喉の消耗というのはそんなに起こらないので、そんな方法で持久力つけようとしなくたって問題は無いんです。
しかもそもそも、さっき言ったとおり声帯は粘膜組織がメインなので、そもそも持久力とかつけようが無いですし。


それと、「地下室みたいな密室になりやすい場所で、大人数で大声」というところも非常にダメですねー…。
どんだけストレスフルな状況つくってんだよ、と。
(まあ、正常な判断力・思考力を失わせたり、一種のトランス状態に持って行くには最高の環境かもしれないけれど。)
これだけストレスフルな環境をすり込まれてしまうと、「大声を出すこと=不快」という条件付けがされてしまい、「あいさつするだけで何だかモチベーションが下がってしまう」というあんまり望ましくない従業員を量産してしまいかねないですね。



○大きく爽やかな声で挨拶するためには


そういうわけで、今回のまとめは
・ひたすら大声を出し続ける発声練習は、百害あって一利無し。
ということになります。
まあ、一〜二利くらいはあるかもしれないけれど、その程度のものです。
それを踏まえた上で、
・大きく爽やかな声で挨拶できるようにするためには、相手との位置関係や声を出す空間、相手に与えたい印象などの「意識づけ」がとても大切
・その上で、「意識はできてるんだけど声がついていかない…」ってなったときに、例えば「顔は下向いていないか」「口はしっかり大きく、力抜いて開けているか」「表情は暗くないか」「呼吸は弱くないか、不安定じゃないか」…などのテクニカルな話になってくる
という流れになってくるわけですね。


このブログの「声量」に関する記事は、記事一覧かこちら(↓)のアドレスからどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/archive?word=%2A%5B%C0%BC%CE%CC%5D


その他のカテゴリの関連記事
「闇雲な練習」について考えた。−烏は歌う 


腹から声を出す!その2−烏は歌う