腹から声を出す!その3

今回は腹式呼吸、「腹から声を出す」方法について。
↓の過去記事に目を通しておくと、よりわかりやすいかも。


腹から声を出す!−烏は歌う 


腹から声を出す!その2−烏は歌う 



○一般に理解されている腹式呼吸とは…


あんまり本格的にボイストレーニングをやったことのない人だと、腹式呼吸というものについて、
腹式呼吸」→「お腹」をへこませて息を吐く&「お腹」を膨らませて息を吸う
という呼吸だ、という認識をもっているのが普通だと思います。


で、この認識というのが、ある程度発声に詳しくなると、
「間違っているとも言えないが、正しいとも言えない」
と感じるようになってくるんです。


「論より証拠」ということで、
過去記事で紹介した「軽く閉じた上の前歯と下の前歯の間から強い息をshhhhhhh!と押し出す」というボイトレ
をしながら、「みぞおち」や「脇腹」あたりを触ってみましょう。
息を吐くために「へこむ」どころかむしろ「膨らんでいる」のがわかりますね。



○「お腹」を引っ込めない腹式呼吸


さて、腹式呼吸である程度「強い呼吸」をしようと思ったら、「みぞおち」や「脇腹」はむしろ膨らむ、ということをわかっていただいたところで本題です。


今日のボイトレは、
1.鼻から大きく息を吸い込んで「お腹」全体を大きく膨らませ、
2.その膨らみの「全体」をしぼませないようにして息を吐いてみる
というエクササイズをやってみましょう。
みぞおちや脇腹だけでなく、おへその辺りや下腹部なども思い切り膨らませ、それをしぼませないように息を吐くのです。


・この呼吸法で深呼吸数回
・30秒程度息を吐き続ける×数セット
・普段の発声練習を、この呼吸法でやってみる
など、練習メニューはお好みでどうぞ。


お腹の膨らみ具合を実感しにくい場合は、ベルトなどをちょっときつめにウエストに巻いて、それを押し返すように息を吸い、息を吐くときにもさらに押し返すように力を入れながら息を吐いてみましょう。


慣れてきたら、猫背にならないように注意してね!慣れないうちは仕方ないけど。
あと、腹直筋に力入れたらお腹は固まってしまいますんで、「腹筋(腹直筋)に力を入れる」のはダメです。
当然、胸郭(肋骨で囲まれた空間)も狭めたらダメです。
あとはまあ、全身が力まないように注意し、たまに伸びをしたり身体を揺らしたりして無駄な力を抜きましょう。


…やってみると、脇腹や背中、そして腰や「へその下」に物凄い力が入りませんでしたか?
そして、腹圧(お腹、横隔膜より下の空間にかかる圧力)が物凄い強くなって、お腹パンパンになりませんでしたか?
これがいわゆる「丹田呼吸」の状態です。
(まあ「丹田」っていうとどうも一気に疑似科学っぽくなるのでこの言い方はあんまり好きじゃないんですがねー…。)


この呼吸にどんなメリットがあるかというと、
・強い腹圧をかけることによって、強く安定したブレスが吐ける
・強い腹圧と「横隔膜を引き下げる力」の拮抗状態を作ることで、息のコントロールが自由自在になる
という2点が上げられます。


腹式呼吸で息を深く吸ったとき、横隔膜は下まで深く下がり、横隔膜の上の空間(胸郭)にある肺に空気が入ります。
で、力を抜けば横隔膜は上に戻って行き、肺の空気が押し出されていくわけですが、このときに横隔膜が「自然に戻るまま」に任せたら、コントロールが効かずに「一気に」呼気が「溢れ出す」というか「漏れ出す」というか、そういう感じのブレスになってしまうわけです。
なので、発声をコントロールするためには何らかの筋肉を使って横隔膜の戻りをある程度コントロールする必要が出てくるわけですが、その時に使われるのが、今回のボイトレで鍛えられる筋肉なんです。


腹式呼吸しているのに呼吸が安定しない!」
腹式呼吸しているのに全然息が続かない!」
…などの悩みを持っている人は、是非試してみてください!



○余談


・「お腹」をへこませて息を吐く&「お腹」を膨らませて息を吸う、という呼吸法は「寝るとき」の呼吸であって「声を出すとき」の呼吸ではない!と指導する人もいます。逆に、腹式呼吸の導入の導入として「寝るときの呼吸をしてごらーん、それが腹式呼吸ですよー」みたいな指導も根強いですが。


・身体の傾きとか、下半身(お尻や内股)の力の入れ具合とか、前後どちらに重心をかけるかとか、身体の使い方を変えてみると、「下腹(身体の前面)」に特に力が入ったり「腰(身体の背面)」に特に力が入ったりすると思います。どっちが良くてどっちが悪い…という話ではないので、「前後両方とも力が入れられる」状態を基本としつつ、TPOによって使い分けてください。色々試して遊んでみて「自分にとって最適のバランス」を探してみてください。


・「下腹(身体の前面)」に特に力を入れるのを「ドイツ式発声」、「腰(身体の背面)」に特に力を入れるのを「ベルカント(イタリア式発声)」と呼ぶ…という噂が割と有名です。が、私はどちらかのプロに教えを受けたわけでもないので、この辺の話はスルーでお願いします。


・あと、この「横隔膜が一気に戻らないように保つ力」、あるいはその「支点・起点となる筋肉」を指して「支え」と呼ぶことがあります。用例としては「腰で支えろ!」とか、「支えがしっかりしてないから声がぶれてる!」とか。


・が、「支え」って用語も、ボイトレ・声楽界では頻出単語なのに使う人と場合によって意味がさっぱり違う、定義の曖昧な「発声ジャーゴン」の一種ですので要注意です。