発声の前に、息はしっかり吸うべき?

さて、今回は呼吸に関して。
今回も、ボイトレ界隈で意見が対立、というか、一見間逆の教えが広まっているものについて整理してみます。


で、今回のテーマは「発声の前に、息はしっかり吸うべき?」というもの。
・息をしっかり吸ってから声を出しましょう
(しっかり吸ってから吐いて声を出す、「吸→呼」の順)
・声を出す前に息をたくさん吸おうとしてはいけません
(まずは息を吐いて声を出し、吐いた分だけ反動で息を吸う、「呼→吸」の順)
という2つの考え方があります。


…この間ボイトレの入門本を数冊見てみたら、どっちの立場の本も数冊ずつあったかな。



○発声前に息をしっかり吸うことのメリット・デメリットとか


メリットは…
ロングトーンや大きな音量を出すときには、やはり予めたくさん息を吸っておきたくなる
(事前に大きく吸う必要が実際になくとも、「たくさん吸っておいた」という安心感による良い効果があったりします)
・息を吸い込むときに、声を出すための「身体の準備」ができる場合もある


デメリットは…
・息を「焦って吸い込む」と、喉(ものを飲み込む筋肉)が力む
(吸うときに喉がヒューヒュー鳴る場合、この筋肉が力んでいる可能性あり)
・息を「胸に無理に溜め込む」と、上胸部が力む


…こんな感じで、メリット・デメリット両方があるわけですね。
なので、
・息をしっかり吸ってから声を出しましょう
→こういうデメリットに気をつけながら、意識して「正しい息の吸い方」でしっかり息を吸いましょう!
・声を出す前に息を必要以上に吸ってはいけません
→こういうデメリットが出ることが多いので、あんまり「息を吸うこと」を意識し過ぎて頑張り過ぎないこと!
という感じなんです。
前者も後者も、一見真逆のこと言っているようで実はだいたい同じ内容(変な息の吸い方をすると身体が変に力むから気をつけよう!)なんですね。


で、発声前に意識的にしっかり息を吸う「必要性」があるかどうかと言うと…
「あんまり無い」
そうです。
基本的に、肺活量が数リットルある中で、普通に「一息分だけ声を出した」場合に使うのはせいぜい数百ミリリットルだそうで、そのくらいの「息の余裕」は意外と有る場合が多い(肺に余分に蓄えられてる)そうです。
なので、発声前に殊更しっかり息を吸う必要はないそうな。


それに、普通は「声を出そう!」と思ったら、無意識に息を吸ってますよね?
基本的には、息の量はその量で十分で、それで息が足りなくなるのは「出す前のイメージ」か「出し方」に問題があるとい考え方がボイトレ界隈では主流かな。



○まとめ、というか私の考え


で、まとめると、


1.「息をあんまり急激に吸うと色々と力む」ので声に悪い影響を及ぼすこともあるし、そもそもそんなに息を大量に吸う必要は無いので、


2.あんまり「吸うぞ!」と意識し過ぎたり、吸い過ぎたらダメ。息を吸う動作は、あんまり意識しないでも身体が勝手にやってくれるし、それに任すのがよいらしい。


3.やっぱりなんだか息が足りないような気がするから、発声前にしっかり息を吸うぞ!俺は!…ってのも一つの考え方だし、全然あり。ただ、変な力の入り方だけは避けようね。


…という感じです!
変な力さえ入らなければどっちでも良いんです、やりやすい方で。


基本的に、ボイストレーニング初心者くらいの人だと「発声時に使う息の絶対量が全然足りない」(少な過ぎる息で声を出すのに慣れきっている)って場合が多いのです。
そういう場合には、息をたっぷり使って発声する感覚をつかむために、「しっかり吸ってー」みたいな教え方も効果あるかも。
もちろん、「息を吸ったときに、喉や首や肩や胸が力まないことの大事さ」や、「力まない息の吸い方」を同時に教える必要も当然ありますが。
「できれば鼻から吸おう」とか、「声を出す『寸前』には『吸い終わって待っている状態』にしておこう」とか、「息を吐ききって身体の力を緩めたら息が『自然と入ってくる』感覚を覚えよう」とかね。


あと、
・声の出し始めに声がぶれたり、濁ったり、声にならない「息だけ」の瞬間がある
ロングトーンの中で息の量が大きく変動する
・長く声を出して何度も息継ぎするうちに、だんだん息苦しくなったり息が足りなくなってくる
・吸気時に喉が鳴る
なんて場合、「息の吸い過ぎ」というか「ダメな力の入った息の吸い方」をしている可能性が。
そういう場合は、あえて「しっかり息を吸おう」とせずに、「軽く息を吸った程度の肺活量で何とかなる範囲で声を出す」とか、そういった方向の努力も有効かも。



○関連エントリ


・あなたの声の魅力を引き出し、会話やスピーチを成功させるための「第一声」の出し方 - 烏は歌う
↑息を吸うことで「声の準備」をする方法について


・大勢の前で声を出す場面での緊張を克服するための、ブレス・ボイストレーニング - 烏は歌う
↑「吐いた分だけ息を吸う」方法と、「息の吸い過ぎによるデメリット」について


・声を使うときに「鼻呼吸」をする4つのメリット - 烏は歌う
↑力の入りにくい息の吸い方、鼻呼吸について