2−2 声帯についての基本的な知識

1 目次


2 発声の3要素、息・声帯・共鳴
2−1 発声に必要な息のコントロールとは - 烏は歌う
2−2 声帯についての基本的な知識
 ・声帯という器官
 ・発声のメカニズム
 ・声唇と声
 ・声帯粘膜と声
 ・声区について
 ・「喉を開くこと」について
2−3 声と共鳴について

○声帯という器官


さて、今回は声帯についての基本的な事柄について説明していきます。
声帯は、肺から上がってきた「息」を「音」に変換する器官です。
当然、ボイストレーニングにとって非常に重要な部分なのですが、普通は「見ることのできない」部分ですし、感覚も非常に「感じ取りにくい」部分でもあるので、なかなか意識することが難しいです。


声帯の構造についてですが…私が説明するよりも、
大雑把な説明なら↓
声帯 - Wikipedia
細かい説明なら↓
声帯と声の関係
あたりの方がわかりやすいかと思います。


「最低限」の説明をしておくと、


・声帯は、喉仏(喉頭)の内側にある、一対の粘膜のヒダからなる組織である。


・声帯は「声唇」という筋肉組織と、それを覆う「粘膜」の2種類の組織からなる。


・声唇は縦横に筋肉繊維が走っていて、かなり自由に動かすことができる。


・粘膜についても、喉頭を上げ下げすることで伸ばしたり縮めたりすることはできる。


・普通、呼吸時には開き(2枚のヒダが離れ)、発声時には閉じる(2枚のヒダが寄る)。


という感じでしょうか。



○発声のメカニズム


声帯で息が音になる仕組みについて説明すると…
寄せられた(閉じられた)声帯の2つのヒダの間を空気が通り、声帯の粘膜が振動することで音が鳴る
という仕組みです。


声帯の振動について複雑な話をするとなると、「ベルヌーイ効果」とか「エッジボイスと普通の声における声帯の振動状態の違い」とか「声帯自体の振動よりも、それによって生まれる空気の疎密こそが声の正体と言える」とかについても説明しなきゃならないのですが、今回はちょっとその辺は省かせていただきます…。


で、この「声帯原音」の状態では、「ごー」とか「ぶおー」とかそんな感じの弱々しい音で、私たちの知っている「声」とは全く異なる「ただの音」です。
この「声帯原音」を私たちの知っている「声」にするには、「共鳴」という段階を経て、音量を大きくしたり音色を整えたりする必要があります。


…で、この段落は余談。
前にも言ったとおり声帯というのは見えないし、感じ取りにくいです。
その上、声帯原音は「共鳴」で増幅され、色付けされるので、声になってしまえばわかりにくい。
そういう事情があり、一昔前(と言ってもずっと昔ですが)のボイストレーニングメソッドや、素人ボイストレーナー(合唱団のベテラン団員とか)の場合、「呼吸」と「共鳴」についての知識・実践しか無いとか、「声帯の仕組み」をそもそも全くわかってないとか十分あり得る話なので注意しましょう。
「共鳴」させて増幅し、色付けできるとはいえ、声帯自体をある程度コントロールできたほうがいいに決まってますので。



○声唇と声


声唇(声帯の筋肉部分)の状態によって、声の質は大きく変わってきます。
先ほども書いたように、声唇には縦横に複雑に筋肉繊維が走っているため、意識はしづらいのですがかなり自由に動かすことができます。


声唇が力んで固くなれば当然声質は固くなりますし、声唇が柔ければ柔らかい音質になるでしょう。
声唇が固い・柔らかい、厚い・薄い、寄せる力の強い・弱い…など、様々な違いが、そのまま声質の違いとして表れます。
まあ、声帯の力加減・形・閉じ方…と様々な要素があるだけに、なかなか「声帯にこう力を入れるとこうなる!」とは一概に言えないのが難しいところ。


少なくとも確実に言えることは、
「発声時の声唇は、適度に閉まっていて、かつ適度に脱力できている状態が理想である」
ということ。
声帯がきっちり寄せられていないと、圧力がかからず息漏ればかり起こってしまい、効率よく息を声に変換できません。
そのような状態では、声帯がうまく振動せず、息の量の割に弱々しい声になってしまいます。
かと言って、声唇にガチガチに力が入ってしまうのも問題です。
息の流れをせき止めてしまう程にガチガチに声帯を力ませて閉じてしまっては声帯がうまく振動しなくなりますし、声帯に息の圧力が掛かりすぎてしまって声帯を痛めてしまう場合もあります。


「適度な力加減」というのは非常に難しいのですが、とりあえず手っ取り早い訓練法として、
「リップロール(唇をプルプルさせながら声を出す)」
をした時の喉の力加減が正解に近い…と言われています。



○声帯粘膜と声


声帯粘膜は、粘膜ですので、当然自力で動かすことができません。
しかし、喉頭を上げ下げすることによって、声帯粘膜の張り具合を変えることができます。


楽器をイメージしてもらえるとわかりやすいと思うのですが、音を鳴らす「弦」や「膜」が緩んでいる状態では良い音が鳴りませんよね?
声帯粘膜も同様に、良い音を鳴らしたければピンと張ってやる必要があります。


喉頭を下げると、声帯粘膜が引っ張られて伸びます。
なので、良い声を出すためには「喉仏を上げないで、下げる」ことが重要であるとされています。
例えば、「『あくびの喉』で発声する」「喉を(上下に)開く」…などのように指導されることが多いかと。


喉頭が上がると…これは、「声を出すため」の喉の状態ではなく、「ものを飲み込むため」の喉の状態です。
なので、とても声が出しにくい状態で、声質も悪くなるしコントロールもきかなくなるし、なによりこの状態で声を出すと非常に声帯を痛めやすいです。


また、喉頭の高さ以外にも声帯の粘膜を「表情筋」「背筋」などの筋肉でもコントロールすることができると言われています。
「目を見開く」「軟口蓋を上げる」「奥歯でものを噛むように」「姿勢をよくする」などの動きをすることで、声帯の粘膜を「後ろに引き伸ばす」ことができ、こういった筋肉も喉頭の動きと連動させて使っていく必要があります。
喉頭だけ下げて表情筋などが使えていないと、声帯の粘膜は思っていたほど伸びず、いわゆる「喉声」になってしまうことがありますね。
あと、喉頭を下げようとし過ぎて舌の下部や首が力んで硬直してしまうのも「喉声」の原因になりますので、あまり力任せに下げすぎないこともけっこう重要です。



○声区について


いわゆる「頭声」とか「胸声」とか、「ヘッドボイス」とか「チェストボイス」とか…についての話です。
Wikipediaを見てもらうとわかるのですが、歴史的経緯とか各流派における扱いとか、諸事情によりちょっと複雑です。


とりあえず、いわゆる「裏声」といわゆる「地声」では声の感じが全然違いますよね?
というか、違うから別の名前が付いているわけですが…。
で、このように「何種類かの声」を私たち人間は使えるわけですが、なぜこのように「何種類かの声」が生じるかと言えば、「声帯の運動パターン」が何種類かあるからなんですね。
そのように生じる声の種類を分類したものを、「声区」と言います。


で、この声区の分け方にも色々なパターンがありまして…。
ちょくちょく自分なりにまとめを書こうとはしてるんですが、その度に知識と説明力の不足から痛い目を見てます(苦笑)↓。
地声とか裏声とかヘッドボイスとかチェストボイスとか〜その1〜 - 烏は歌う
地声とか裏声とかヘッドボイスとかチェストボイスとか〜その2〜 - 烏は歌う
改めて、チェストボイス・ミドルボイス・ヘッドボイス・ファルセットについて説明します(訂正あり) - 烏は歌う



プロのボイストレーナーさんの記事はこちら↓。
56 声区の転換点 - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ


桜田ヒロキ ヴォーカルスタジオ - FAQ テクニックについて 「声の種類について」


ヘッドボイス VS ファルセット: ヴォイストレーナー桜田ヒロキ公式ブログ「Take The Time」| ボイストレーニング | 高い声が出せる!


Wikipediaも割と詳しい↓。
声区 - Wikipedia
リンク先、関連項目の「胸声」「頭声」「ファルセット」あたりも詳しいです。
詳しすぎて逆にわかりにくいところもありますが。


とりあえず、私の記事よりこっちを参考にしてください…。



○「喉を開くこと」について


よく「喉を開いて発声して!」という言葉が多用されていますが、この言葉には、


・「喉の奥の空間」を開け
→喉仏を下げ、軟口蓋を上げ、もっと張りのある声にしろ


・声帯の2枚のヒダの間を開け
→声帯の接触を減らし、もっと息混じりの声にしろ


という2通りの「解釈の仕方」があり、しかもその2通りの声の出し方は効果として「正反対」なので注意しましょう。


で、普通は「前者」を指して「喉を開いた発声」という場合の方が圧倒的に多いかと思います。
この場合、「喉≠声帯」で、喉の空間を開くとむしろ声帯はきっちり閉じますので、注意が必要です。


…たまにいるのが、前者の意味で「喉を開け!」と言われてどうすればいいかよくわからなくて、声帯を開こうとしちゃう人。
よくこのブログにも「声帯を開く」で検索してくる人がいますが、誤解してなければいいなあ…と思います。
誰に対してもとりあえず「喉を開いて!」みたいな事を言う人がいますが、こういう指導はあまり好ましくないなあ…と個人的には思います。