7−2 聞き取りやすい声を目指す

1 目次


7 一人よがりな発声にならないために


7−1 声を相手に届けるために
7−2 聞き取りやすい声を目指す
 ・聞き取りやすい声とは…
 ・声と周囲の環境
 ・声と相手の状態
 ・「ゆっくり」話すときに気をつけたいこと

○聞き取りやすい声とは…


基本的には、「適切な音量・高さ・音色」と「適切な速度」が、「聞き取りやすさ」を実現するためにまず必要となってきます。
ただ、この「適切な」というのが時と場合によって全然変わってくるので、なかなか難しいものなんですよねえ…ということを、今回はまとめていきたいと思います。


とりあえず「聞き取りやすい声、言葉、話し方…」というものを目指す上での第一歩は、
「相手をしっかり見て、大きな声で、ゆっくり、はっきりと声を出す」
という、小学校で教わるようなレベルのものになります。
…ただ、これが大人になっても(大人になるほど)できない人は多いですね。
まずはこの標語を常に意識して発声できるように意識付けをしましょう。
次なる一歩として、下に書いていくような細かいことに注意していってもらいたいな、と思います。



○声と周囲の環境


環境が変われば、当然「適切な声の出し方」も変わってきます。


特に影響が大きいのが、「どの程度音が響くのか?」という問題。
よく響く部屋などで声を出す場合、「必要な音量」は多少小さくても構わなくなりますし、大声を出しすぎると逆に聞き取りにくくなる…ということもあります。
「音色」についても影響は大きく、よく響く部屋であまりノイジーな声を出してしまうと反響でわけがわからなくなってしまいがちですが、子音などの「聞かせたい噪音」はクリアに出さないと反響に埋もれてしまいます。
なので、響きのよい環境を最大限に活用するためには、「ソフトでクリアな声を出すことを意識しつつ、子音はくっきりと浮かび上がらせる」という少々難しいことをやっていく必要がありますね。


逆に、響かない場所や、騒音の多い環境などでは、「求められる声」というものは全然違います。
相手との距離があれば、とにかく大きな音量を出していかないとスタートラインにも立てないような状況ですし、多少ノイジーになろうと「輪郭のはっきりした声」「特徴的な声」を出してやった方が聞き取りやすくなりますね。
また、子音に関しても相当はっきり出さないと聞こえないですし、はっきり出しても伝わらないことも大いにあり得るので、いざとなったら「表情」や「文脈」から判断してもらう…というのも手段の一つです。


このように、環境によって声というものは大きく変わってしまいますので、注意が必要です。


声と環境について、その1。 - 烏は歌う


声と環境について、その2。 - 烏は歌う



○声と相手の状態


聞き取りやすい声というのは、環境だけでなく、聞かせたい相手によっても全然違ってきます。


例えば、お年寄りに甲高い声で話しかければ「聞き取りにくい声」どころか「不快な声」と取られかねませんが、幼い子どもに対して普段「お年寄りに話しかけるような」落ち着いたトーンで話しかければなかなか相手にしてもらえません。
相手の年代や育った地域、普段付き合っている人の喋り方、話している内容への理解度・関心度、好みの音楽のジャンル、その日の気分・体調…など、様々な要素によって「その人にとって聞きやすい声」というものは決まってきます。
とても一口に「こういう話し方が伝わりやすいよ!」と言えるものではないのです。
なので、
・こちらの声がどの程度届いているか、相手の様子をよく観察する
・相手の状態をよく知った上で、相手の身になって考える
・色々な声の調子を試してみて、試行錯誤する
…などの工夫をすることで、とても「伝わりやすい」状態になるでしょう。


「相手」の声をよく聞いて、それに合わせた声を出しましょう - 烏は歌う



○「ゆっくり」話すときに気をつけたいこと


さて、「ゆっくり話す」というのは、「聞き取りやすい声」を作るために非常に有効です。
ただ、「ゆっくりと話す」ときにいくつかのことに気を付けないと、「ゆっくりと話しているのに/ゆっくりと話すほど聞き取りにくい」という状態になってしまいかねないので注意が必要です。


その注意点とは…
・とにかく「間(ま)」が大切
・文節、フレーズの感覚を失わないこと
・子音と母音の比率を変えてしまわないこと
の3点です。


とにかくスピーチでも歌でもなんでも、間というものは大切です。
間があると、それが句読点のような働きをして文意や文節の区切りを把握する手がかりになったり、聞き手が心の中で「あいの手」を打つタイミングとなって聞き手の中での「話のリズム」を作ったり、頭の中を「整理」したりできて、話を理解をするために非常に大きな手助けとなります。
また、うまく間をとることで、相手の「心の準備」を促し、「聞く体勢」を整えさせたり、「注意を惹きつける」ことができます。
歌の場合も「間」、「休符」とか歌に入る前の「溜め」とかを歌えるようになると、歌の流れが全く別物ってくらいに良くなります。


何も考えずに「ゆっくり」話そうとすると、「間をゆったりと取ってゆっくり話す」というよりは、一文字一文字の間に「変な間」を入れてゆっくりと喋り、「有るべき間」はむしろ「変な間」に吸収されてしまって消滅…という感じになりがちですが、これではダメです。


同様に、何も考えずに「ゆっくり」話そうとすると、やっぱり一文字一文字を等価のものとして一文字一文字ゆっくりと大事に声に出しがちですが、それによって
・文節感、フレーズ感が無くなって「言葉」ではなく「文字の羅列」になる
・子音と母音のバランスが崩れたり、普段と大きく違ってしまって「言葉」にならない
ということがよくあります。


ゆっくり、と言っても「普段の感じ(フレーズ感、子音と母音のバランス)」を崩さないことが大切です。
・その上で、一文字一文字を長く取り過ぎず、文節やフレーズごとに間をしっかり取ること
・文節・フレーズは意識的にも発声的にも「まとまり」を持たせること
・子音と母音のバランスを崩さず、それぞれを優しく適度に長めに発声すること
…などが、大切になってきます。


伝わりやすい「声」の出し方、その1〜「ゆっくり話すこと」について - 烏は歌う


伝わりやすい「声」の出し方、その2〜「大声で話すこと」について - 烏は歌う