「記憶」の仕組みを知って効率よく学習したい…その3、短期記憶の特徴と容量について

感覚記憶→短期記憶→長期記憶


感覚記憶を有効に使うには


・短期記憶の特徴と容量について


・長期記憶を「想起」しやすく保つために

○復習

・短期記憶
そうして選択された情報を意識的に扱い、記憶しておくための領域が「短期記憶」です。
例えば誰かに何かを言われたときに、忘れないように相手の言ったことを何度もつぶやいて情報を保とうとすることがありますよね?その時に情報を保持している領域が短期記憶です。
そういった記憶は繰り返しをちょっとでも中断したり、他に余計な情報が入ってしまったりするとサッパリと忘れてしまいがちですが、そのくらい短期記憶の容量・保持時間は小さく短いものです。
短期記憶で情報を、ある程度の時間、ある程度の質(強度)で記憶することができると、その情報は「長期記憶」に転送されます。

○短期記憶の容量


短期記憶に、一度に記憶できる容量は…なんとたったの「7つ前後(7±2)」です。
たとえば、ランダムに打った、
MNGRARREHG…
いうような文字列を暗記しようとしたら、だいたいの人が「7±2」文字の範囲に収まることが実験で証明されています。
で、この「7±2」というのは、一般に言うところの「頭の良さ」とはあまり関係なく、少なくても凄い人も、多くてもダメな人もいます。
あと、この「7±2」自体は、普通は増やせません。


ところで、普通に会話とかしていると、余裕で何十文字もの言語を交わしあいますよね?
余裕で「7±2」を超える文字で伝えられる情報を何故、特別に記憶しようとしないでも短期記憶として保てる(話の内容を短期的に意識の範囲に収め切ることができる)かと言うと、「チャンク」という概念で説明できます。
たとえば、先ほどと同じようにアルファベットを羅列しますが、
SOFTBANKNTTDOCOMOKDDI…
なら、文字数はさっきより倍多いのに、ずっと記憶しやすいと思います。
SOFTBANK  NTTDOCOMO  KDDI  という風に区切れば、おぼえるべきものの数は「20文字」ではなく「携帯の会社3社」となり、「7±2」の範囲に収まるからです。
短期記憶で保存できるのは、「7±2」個の「まとまり」であると考えられています。
この「まとまり」を、「チャンク」と言います。



○短期記憶の保持時間


短期記憶と言うくらいですから、短期記憶で記憶を保てる時間は非常に短いです。
せいぜい、数秒から数十秒。


しかし、この「制限時間」を増やす方法があって…それは「繰り返すこと」です。
一度覚えて、そのまま数秒で忘れてしまう前に繰り返せばまた改めて数秒、またその数秒の間に繰り返せばさらにもう数秒…という感じで、単純に記憶時間を引き伸ばすことができます。
これを心理学用語で記憶の「リハーサル」と言いますが。
で、この「リハーサル」をやっている間に記憶は短期記憶から長期記憶に移されます。
そこでやっと、絶え間なく「リハーサル」をしなくても、安定して長期間記憶を保てるようになるのです。



○短期記憶の特徴から言えること。


まずは、「長期記憶に移行するまでは、気合で何度も繰り返せ!」ということ。
あんまりこういうスパルタ的なものは嫌いなんですが、そういう仕組みなのでしょうがないです。
一度や二度見たり聞いたりしただけでは数十秒の間に記憶が忘却されてしまう可能性が高いので、まずは何度か反復することです。
ただ、「長期記憶に既に移行した記憶」は、短期間に何度も反復してもそんなに効果がないので注意。


次に、「7±2の取り扱いに注意せよ!」というところですね。
一度に頭で扱える物事の数が「7±2」なので、それを大幅に超えた容量は、どんなに反復して記憶しようとしても正確さに欠けます。
というか、なかなか「リハーサル」をすることができないと思います。
一度に取り扱う、記憶しようとする情報を「7±2チャンク以下」に抑えると、記憶のしやすさや正確性が上がるので、結果的により効率的な記憶の仕方となります。


また、これは記憶に限らず、「一度に意識できるものごとはせいぜい7±2」ということは知っておくといいかもしれませんね。
例えばボイトレでも、「姿勢に気をつけつつ、表情は口がこうで、目がこうで、喉は…」とか一度に何個も「注意しよう」としても、まあ大概ポシャります(笑)。
基本的には一つずつ、多くても2〜3個の課題だけに集中したいものです。
そうして「身につけた(=長期記憶となった)」ものは、ほとんど無意識(=ごく少ないチャンク)で使えますので、空いたチャンクを利用してまた新しい課題と向き合えるのです。
…それを怠って、欲張って課題を何個も同時に解決しようとすると、延々「身にならない」練習を繰り返すことに。
あと、「一度に意識・記憶できるものごとはせいぜい7±2」なので、「5チャンク以上の情報を取り扱うときには、とにかくすぐにメモる」とか、そういう方法もいいかもしれないです。
「5チャンク以上の情報を指示するときには、必ずメモさせる」とかも。


また、「チャンキングに気をつける」というのも、効率のよい記憶に欠かせません。
「チャンキング」とは、ようするに物事を「チャンク」に区切ることです。
例えば11桁の携帯電話番号を、
0☓0−☓☓☓☓−☓☓☓☓
という風に「3」「4」「4」に区切ることによって、11桁という「7±2」を大きく超える物事をより簡単に脳内で扱えるようになり、「リハーサル」が可能になります。
「おぼえやすい単位(7以下、もしくは5以下)」に区切ることで、格段に短期記憶でのリハーサルが行いやすくなります。
この「チャンキング」は、普通の人ならある程度無意識にやっていることなんですが、意識的にやることでより効果があるかも。


あと、何かを伝えたり伝えられたりする場合、この「チャンキング」の差がコミュニケーションの障壁になる場合が多いので、注意する必要があります。
例えば…「カベルネ・ソーヴィニヨン」というワイン用の葡萄がありますが、これは、「知っている人」にとっては1〜2チャンクで処理できる内容です。
しかしこれを知らない人に何も考えずに口頭で伝えると、「カ・ベ・ル・ネ・ソ・ー・ヴィ・ニ・ヨ・ン」と10チャンク前後になってしまうのでかなり間違いやすくなるし、「+α」の情報を同時に伝えることは非常に難しいです。
ある程度その分野に慣れると、自然と専門知識が「チャンキング」されて、一度に多量の情報を扱えるようになります。
しかし、「チャンキング」が出来ていない素人は固有名詞や用語や概念の一つ一つに大量のチャンクを消費してしまい、短期記憶に情報を保持すること自体が難しくなります。
この差を意識しないと、お互いに不幸なことになりがちですね。