「記憶」の仕組みを知って効率よく学習したい…その4、長期記憶を「想起」しやすく保つために

感覚記憶→短期記憶→長期記憶


感覚記憶を有効に使うには


短期記憶の特徴と容量について


・長期記憶を「想起」しやすく保つために

○復習

・長期記憶
感覚記憶で選択され、短期記憶で保持・強化した情報を、長期に渡って貯蔵していく記憶領域が「長期記憶」です。
…普通、ものごとを「記憶した」と言えるのは、この段階に入ってからですね。
容量は非常に大きく、「ほぼ無制限に情報を溜め込める」と言う人さえいるほどです。
また、長期記憶の維持期間も「ほぼ半永久的」と言われています。
情報を記憶として取り込むことを「記銘」、それを保存することを「貯蔵」、貯蔵された記憶を思い出すことを「想起」と言います。
…つまり、「貯蔵」したらあとで「想起」、つまり情報を「検索」して見つけ出さなくては、記憶した意味が無くなってしまいます。
「きっちり覚えたはずなのに、いつの間にか忘れていた!」というのは、記憶が消えて失われたわけではなく、「想起」「記憶の検索」に失敗している場合が多い…というのが定説です。


○記憶を想起しやすくするための2つの方法


一度長期記憶となった情報は、そうそう「消えて」しまうことはありません。
しかし、ある程度時間が経つと記憶の海の中に沈んでいき(←比喩表現)、その情報を思い出そうとしても「検索」して見つけ出すことができず「想起(思い出すこと)」することが難しくなってきます。
このことを、一般に「忘却」と言います。


記憶を想起しやすくする方法は、代表的なものが2つあって、
・ある程度の期間を置いて反復すると、情報が忘却されにくくなる
・記憶と記憶の間に「関連性」が出てくると、情報を検索しやすくなる
という二つです。



○ある程度の期間を置いて反復すると、情報が忘却されにくくなる


イメージとしては…
記憶は、意識から外れるとどんどん記憶の海に沈んでいくが、見失ってしまわないうちにそれを引き上げ続ければ、見失うことはない。
また、何度も「沈んでは引き上げ」を繰り返していると、いつの間にか「沈みにくく、引き上げやすい」形に記憶は変わる。
…という感じ。


なので、記憶を想起しやすい状態で保持するために最も必要なのは…
「ある程度の期間を置いて、まめに何度も復習すること」
です。
一度の復習の時間はそんなに長くなくていいので、定期的に復習…というのが何より大切。
1日30分×1日というやり方よりも、1日3分×10日という感じの方が、記憶が定着しやすいと言われています。
つまり、「一夜漬け」は至って効率が悪い…ということ。
あと、毎日毎日オーバーワーク…というのも、効率が良くありませんので、「俺は1日30分×10回やるのじゃー!」ってのはあんまりお勧めできません。
記憶が十分に「引き上げられた」状態を作れれば、その後の行為は「けっこう無駄」ですので。


・「千本ノック」より、「一日10本ノック×毎日」が効果的、というお話↓
「闇雲な練習」について考えた。 - 烏は歌う


ある程度の期間を置いて…というのは一概には言えないのですが、記憶しにくいことは「1日おき」、記憶しやすいことなら「数日〜1週間おき」くらいがいいようですね。
例えば、ピアノの練習や野球のバットのスイングなどは、「毎日毎日やらなければならない」と言われています。

イチロー選手でも、毎日バットを握って練習を反復しなければ精度は落ちてしまいます。最近の理化学研究所の実験では、大まかなスイングの記憶は大脳皮質に分散して記憶される「長期記憶」に残りますが、細かい技は長期記憶に定着しにくく、日々鍛練しないと定着しないことがわかっています。「極限までバットコントロールを高める」というイチロー選手の意欲と毎日の練習が、超精密なバットコントロールを支えているのです。

via-これは凄い!『上達の技術』を便利にする7つのツール:マインドマップ的読書感想文
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/51924012.html

これは、ボイトレでもそうだと言えます。
おおまかな身体のコントロールというのは「一度自転車の乗り方を覚えたら忘れることは無い」と言われるくらい非常に想起しやすい状態で残る「強い長期記憶」ですが、細かい技、微妙なコントロールというものは、意識の範囲から手放した瞬間にかなりのスピードで記憶の海に沈んでいってしまいます。
なので、技術や知識の記憶を「使える状態」に保つためには、毎日毎日、何度も「沈んでは引き上げ」を繰り返すことが大切です。


この辺の話は、「忘却曲線」で検索するともっと詳しい話が出てくるのですが…かなりエセ科学のオンパレードですのでご注意を(笑)。
これとかは良心的↓。
効果的な復習法〜エビングハウスの忘却曲線より〜|川井太郎の公務員受験生応援ブログ



○記憶と記憶の間に「関連性」が出てくると、情報を検索しやすくなる


また、記憶を「関連性」のある状態で保つと、記憶の想起がしやすくなります。
想起したい記憶が色々な記憶と「関連性」を持っていると、記憶の「検索」を行うための「取っ掛かり」が増えるので記憶の想起がしやすくなるのですね。
そのための方法として有名なのが、
・記憶と動作と組み合わせる
・物事を様々な面からイメージし、学習し、記憶する
というもの。


・動作と組み合わせる
というのは、例えば「漢字は書いておぼえなさい!」とか、そういうのです。
さっき書いた「一度自転車の乗り方を覚えたら忘れることは無い」という話もそうなんですが、「自転車乗る」とか「文字を書く」とか「言葉を喋る」とかの「動作」って、簡単そうに思えて非常に複雑で、様々な要素が「関連性」を持って記憶されていないと実現不可能ですよね。
動作の記憶は非常に強い関連性を持っているため、どこかの動作の記憶が想起できれば、関連性を持った他の記憶も同時に想起されます。
それを利用して、「特別記憶しておきたいこと」を動作の記憶の関連性にリンクさせる記憶法があります。
例えば「記憶したい言葉を書きながら、音読しながらおぼえる」とか。
あとは、「関係無い動作(例えば身体の一部分を触る、とか)」をしながら何かを記憶し、その動作を想起のための「鍵」として使う、という記憶法も一時期流行りました。


・物事を様々な面からイメージし、学習し、記憶する
というのは、例えば「人名を記憶するときに、ただ名前だけを反復するだけでなく、その人の顔や声やエピソードや人間関係や…色々を同時に記憶すると、長期間経っても忘れにくくなる」という話です。
私の経験だと、高校時代にまわりが「単語帳」にひたすら用語を書いて「一問一答」をやっているのを横目に、ずっと「教科書」や「図表」や「資料集」を眺めて、それで割と良い点を取ってました。
…「図」や「グラフ」や「ストーリー」や「だれかのセリフ」としておぼえた記憶って結構残るんだけど、断片的に切り取った内容って意外に頭に残らないんですよね。
何かを記憶しようとするときに、その記憶と別の記憶との関連性をしっかり作っておくと、ある記憶の想起が別の記憶の想起を呼び、連鎖的にいくつもの記憶が想起・強化され…という風になります。
そういう状態になれば当然、記憶が関連付けられた分野における「記憶力」は大きく増します。
教育において「系統性」というのが重要視されているのはこの性質を利用するためでもありますし、一時期流行った「マインドマップ学習法」とかも、この性質が関係しますね。



○最後に


などなど、一通り書いて見ましたが…
ボイトレでも、もちろん他の分野でも、「何がどのように上手く行っていないのか」というのを正しく見極めることは非常に大切ですね。
それを調べていく上で、この「記憶のメカニズム」を知る、というのは非常に重要です。


「なんだか練習の成果が身につかないなあ…」と思ったときに、
・「身につかない」にも色々な段階がある
 「右から左」→短期記憶になってない
 「一時的に意識したり反復はできるけど、数分後には全部忘れてる」→長期記憶になってない
 「確かにおぼえたはずなんだけど、今日に限って思い出せないぞ」→想起に失敗している
   →それぞれ、解決法が違う
…ということを知っていると、練習の効率も上がりやすいし、スランプにも陥りにくいです。


今回は慣れない内容で、少々面倒くさい感じの記事になりましたが、だれかの何らかの手助けになったら嬉しいなあ、と思います。