発声練習の「目的」をはっきりさせよう。

○定番の発声練習について


「発声練習」って言ったら一番に何を思い浮かべるかと言えば…

みんなでピアノに合わせて
「あーあーあーあーあー(ドレミレドの節で)」
チャッチャーン(ピアノに合わせて半音上に転調)
「あーあーあーあーあー」…

みたいなやつでしょうか。


こういうやつ(正式名称なんて言うんだろう?)、メロディーや、発声に使う「言葉」などで様々なパターンがあります。
で、なんで様々なパターンがあるかと言えば、
「選択したメロディーや言葉によって発声練習の効果が変わる」
からですね…ちょっと考えてみれば当たり前の話ですが。


だからまあ、発声練習をする人の特性や課題、時と場合に応じて最適な発声練習というものをしていきたいものですが…。
では、こういうやつを日常的にやってる人が、その「発声練習の効果」の違いを意識しながら練習メニューを組み立てているかというと…考えてる人とあまり考えていない人がいる、というのが現実でしょう。
「先輩がこうやってたからうちは伝統でこう!」とか、「今日はこういう気分だからこれをやるぜ!」とか…そういう人も少なくないはず(笑)。


そんなわけで今回は、
・脱、「なんとなく発声練習」!
・もう既に「考えてやっている人」には、新しい視点を!(できたらいいな)
という感じで書いていきます。



○目的をはっきりさせよう


とにかく「発声練習」をする際に考えて欲しいのは、
・何を目的にするのか?
ということ。


そのなかでも最初に考えて欲しいのが、まず
・やりたいのは、「ウォーミングアップ」なのか「実力アップ」なのか?
ということ。
これ、一緒くたにされがちなんですが、やるべき事は全く違ってきますので。


「ウォーミングアップ」がやりたいのなら、「他の何よりも」とにかく声帯を温めるための発声練習が大切になります。
この場合、「いかにお題のメロディーを正確に、綺麗に歌えるか」よりも、「いかに気持よく声が出せるか」「いかに声帯をリラックスさせつつ声を出すか」…などが重要になってきます。
音程の正確さや「いい声」にこだわることは、ここではむしろ悪影響を及ぼします。
逆に、「実力アップ」的な発声練習をやりたいのなら、課題をはっきりさせた上で、その課題についてはとことん正確に精密にきっちりこなしていかなければなりません。


よくありがちな失敗例が…
「まだ喉が温まってないうちから、音程もきっちり、リズムもきっちり、発音・声質もきっちり…を強く要求」
した結果、
「喉が温まらないうちはきっちりと声をコントロールできない人も多いから、上手く行くはずがない。その上、発声練習の時点で完全に萎縮しちゃって、その後もずっとまともに声を出せなくなる」
というオチ。
…非常によくある話です、というか、私は喉が温まるまでけっこう時間がかかるほうなので、こういう発声練習をされると確実に調子を崩してしまうのです。
逆に、
「ウォーミングアップ的なことしかやらない」

「その後の実践的、応用的な練習のクォリティが一向に上がらない。ちょっと難しいことは全部初見・ぶっつけ状態。」
というのもよくある話。
軽く思い出話をすると、大学の合唱団に居たとき、同期の学指揮が「ピアノで静かに入れって言ってんだろ!なんで小さい音量でぶれずに入るってだけのことができないんだ!」となるのが毎回…という時期があって、私はそれを見ながら「…そりゃあ、小さい音量でぶれずに入れる練習をしたことないからだよ」とこっそり思ってたり。
人間、練習したことしかできない…ってのは当たり前のことなんだけど、意外にみんなわかってない。


ウォーミングアップのための発声練習も、課題解決型の発声練習も、どちらもとても大切なもので、欠かしてはならないものです。
バランスが重要。



○ウォーミングアップのための発声練習について


これについては、過去に何度か書いていますが…


声の「準備運動」…声帯を「起こす」ための簡単ボイトレ - 烏は歌う


声帯のストレッチ…音程を微調整する筋肉を目覚めさせる方法 - 烏は歌う


…と、こんな感じで、「別にメロディーとかつけなくても」、声帯を温めるための発声練習はできます。
他にも、「しばらく低い声を出し続ける」「エッジボイスを出し続ける」「リップロール、タングロールを出し続ける」…なども。


もちろん、「上の音域から下の音域まで満遍なくやらないと、喉が温まった気がしないんだ!」という人は、定番の「あーあーあーあーあー(チャッチャーン)」みたいな発声練習も有効です。
ただし、
・あくまでウォーミングアップなので、あんまり難易度の高いことをやらない
・当たり前にできることを繰り返しやることで、「自信」と「調子の良さ」を作っておく、というのも効果が高い
・あくまでウォーミングアップなので、あんまり精度などにこだわらない
・喉に負担をかけてしまうような音量、音程、音色…などは避け、「楽にできる範囲」で行う
・ダラダラやらず、喉が温まったら別の練習法、意識付けに順次切り替えていく
…などの注意が必要になります。



○課題解決型の発声練習について


「あーあーあーあーあー(チャッチャーン)」みたいな発声練習をするとき、まず課題となってくるのが、「音程感覚を身につける、正確にする」というあたりであると思います。
この「音程感覚を身につける、正確にする」という課題をもって発声練習をする場合は、とにかく音程の正確さにこだわっていく必要がありますね。
「音程」についても、
・ドレミレド(全音の感覚をしっかりつかむ)
・ドミソミド
・ドソドソド
・ド↓ド↑ド↓(オクターブ跳躍)
…など、定番の動きは色々ありますが、「今日は徹底的にこの動きを極めよう!」「苦手なこの音程を正確に動けるようになろう!」「今からやる曲は音域の跳躍が多いから、離れた音程の練習を重点的にやっておこう!」という感じで一点集中でやるのもいいし、「色々な音程を一通り確認しておこう!」という感じで満遍なくやっておくのもよし。
とにかく大切なのは、自分なりに「課題」を持ってやることです。


また、実際に発声練習をするときには「あーあーあーあーあー」だけじゃなく、「ま」だったり「な」だったり「ろ」だったり「まーりーあー」だったり「グッグッグッグッグー」だったり…色々なフレーズ・練習法が存在しますが、その目的は、
「特定の子音や母音を発声することで、特定の声の出し方に慣れる」
というものです。
特定の子音や母音でしばらく声を出すと、その特定の声の出し方が身体に記憶され、その後はどんな言葉やメロディーを出そうとその特定の声の出し方になる、という効果があります。


例えば、「まーまーまーまーまー」という発声練習フレーズは割と有名ですが…
・「m」子音を出すときに、一度声を口や鼻腔に響かせるハミング状態になる
・「m」子音から「a」母音を出すときには、そこそこしっかり口を開いて、声を前に飛ばす必要がある
 ↓
・声をしっかり体内の響かせるべきところに響かせつつ、声を前にも飛ばす練習となる
 ↓
・しっかり「響き」がありつつも「前に飛ぶ」声になる!
…という感じの効果があります。
しっかり課題を意識しながらやらないと意味ないことも多いけどねー。


具体的に、
「どの母音で発声練習すると、どのような効果があるのか?」
については、次回更新する予定です!


それと、最近有名なのが、
「地声と裏声を行ったり来たりせざるを得ない、広い音域にまたがったメロディーで」
「地声と裏声を行ったり来たりしやすいように構成した子音や母音で」
という合わせ技で、ミックスボイスを習得しよう!というもの。
これも、目的というか「仕組み」がわかってた方が、たぶんいいんじゃないかな。
応用もしやすいし、「俺、なにやってんだろう…」みたいな心理状態にもなりにくいし。


他にも、リズム感とか、強弱のつけ方とか、音と音の入り方・つなぎ方・切り方とか、フレーズの長さや速さとか、音域とか、声質とか…単純な「あーあーあーあーあー(チャッチャーン)」みたいなフレーズでも、色々な課題と成り得る要素があります。
何か「自分の持っている課題」があれば、それを単純なフレーズでも練習できます。
というか、単純なフレーズで課題にフォーカスし、スモールステップで一つ一つ解決していくことこそが練習の王道です。


とにかく大切なのは、
「今、何を課題にしているのか」
という問題意識を常に持って、その課題についてとにかく丁寧に、発声練習をすることです。



○関連エントリ


合唱団のための発声練習一例 - 烏は歌う