定番の発声練習に一工夫。

発声練習の「目的」をはっきりさせよう。 - 烏は歌う
…のつづき。
「どの母音や子音で発声練習すると、どのような効果があるのか?」ということについて。


発声練習の定番フレーズ、「あああああー」とか「まままままー」と「まーりーあー」とか色々な言葉・文字・発音でやりますよね。
「発声練習で色々な言葉・文字を使うけどそれってなんで?」
「発声練習のメニューを考えなきゃならなくなったけど、どんな言葉・発音でやればいいの?」
…あたりの疑問に答えられたら。



○母音について


基本的に、母音というものは、喉・顎・舌・唇などの器官をコントロールし、共鳴の様子を変えることとで出し分けられています。
・「あ」…バランスよく共鳴させることで、倍音をバランス良く鳴らす
・「い」「え」…低めの倍音をカットし、高めの倍音を強調する
・「う」「お」…高めの倍音をカットし、倍音を少なめにする
と、いう感じで。
※とりあえず、声は「あ」母音を基本に、「い」系統・「う」系統の2系統に分かれる、ということを覚えておきましょう。


なので、この「共鳴のさせ方が違う」という特徴を利用し、
・「明るい声を身につけたい!」→「い」母音で発声練習し、その声の明るさに慣れる
・「落ち着いた丸い響きの声を目指す」→「う」母音を主体とした発声練習をする
・「ニュートラルな声を鍛えよう」→納得のできる「あ」母音を追求する発声練習をする
…などの活用方が考えられます。


さらに、「共鳴のさせ方が違う」のは「調音器官」や「表情筋」の使い方が違うからなので、これを利用して
・「い」母音で、口角を引き上げる筋肉のトレーニン
・「あ」母音で、表情筋全体をトレーニン
…なども考えられます。


また、「母音の広さ・狭さ」という概念があります。
それぞれの母音を出すときの、唇や口内や声帯…などの開き具合の違いによります。
・「い」系統:(広い)「あ」→「え」→「い」(狭い)
・「う」系統:(広い)「あ」→「お」→「う」(狭い)
基本的に「あ」が最も広く、この順に狭くなっていきます。


広い母音は、「明るく開放的な音色になりやすい」という特長がありますが、「がなり声や浅い声になってしまいやすい」「声帯がきっちり閉じない発声になりがち」という面もあります。
特に、高音での広い母音は、喉に負担をかけてしまいやすく非常に難しいです。
声楽用語で「アペルト」という言葉(開いている、の意)がありますが、「アペルトな声」=「ダメな声」として使われていると思ってほぼ間違いないかと。
なので、「広い母音」を使った発声練習をする場面としては、
・「こもった声をなんとかしたい!」
・「とにかく元気な声を出してほしい!」
などが考えられますね。


逆に、狭い母音は「がなり声になりにくい」「声帯をきちんと閉じることができる」という利点がありますが、「こもった声や、不自然に引き攣った声になりやすい」という欠点もありますし、「日本語に慣れている人は(声楽的に)正しい出し方が難しい」という難点もあります。
特に「い」母音は、声楽(ボイストレーニング)で習ったものと今まで日常会話で使っていものがまるっきり別物…という人も多いですね。
「狭い母音」を使った発声練習をする場面としては、
・「深く整った音色で声を出したい!」
・「高音でもがなり声にならない練習がしたい!」
などが考えられます。


以下に、関連エントリを置いときます。
発声についての色々な問題が解決するかもしれない、「母音」のボイストレーニング - 烏は歌う



○子音について


・m、n
声を出す前に、「響かせる時間」が一瞬できるので、声をしっかり共鳴させてから出す訓練になりますし、音色をコントロールしたり整えたりしやすくなります。
また、一瞬の「響かせる時間」は声帯にとっても「溜め、準備の時間」となりますので、声帯の状態を整えながら発声することができます。
…つまり、とにかく「いい声が出しやすい子音」である、ってことです。
「声の調子を上げていく」ための発声練習や、発声の「基本」を学ぶボイストレーニングや、音域的・発声的に難しいフレーズを扱うときに最も選ばれやすい子音です。


・l、r
口を開けた状態から舌で一瞬「響かせる時間」「溜めの時間」をつくるので、「m、n」と「子音無し」の中間的な性質を持っています。
つまり、そこそこ声を整えることもできるし、「m、n」よりもやや実践的。
また、「舌の運動」にもなります。


・y、w
これも、「m、n」と「子音無し」の中間的な性質を持っています。
そしてこれらの子音の最大の特徴として、「y」子音でのトレーニングは「い」母音でのトレーニングと似たような効果を、「w」子音でのトレーニングは「う」母音でのトレーニングと似たような効果を得ることができます。
母音が開いて仕方ない歌を全部「w」子音に変えて歌うとか、音色が暗くなったり音程がだだ下がる歌を全部「y」子音に変えて歌うとか、どうしても開いてしまう高音をピンポイントで「w」子音に変えて歌ってみるとか、そういう力技もあり。


h、f
この子音を鳴らすためには「息をたっぷり流さなければならない」ので、呼吸のトレーニングや、息をたっぷり使った声の練習に向いています。


・k、s、t
「h、f」ほどではないけれど、適度に息を流しながら発声することで鳴る子音なので、「適度に息を流す」練習に向いています。
例えば、「がなり声」「力み声」「喉で詰まったような声」…などの改善とかね。
また、「深い母音」と組み合わせると非常に声帯や喉周りをリラックスさせやすい、という点も覚えておくといいでしょう。


・濁音、促音
声帯を強く閉じる効果があります。
例としては、「弱々しい声」や「すぐ裏返ってしまう声」の改善によく使われています。
また、「zzzzz…」と鳴らしたり「g」を出すつもりでエッジボイスを出したり…という感じで、濁音を使って「声帯を鳴らして準備運動」というボイトレ法も広く知られていますね。



○得意・不得意に合わせて


あとはまあ、やる人の「得意・不得意」に合わせてやってもらえればいいと思います。

母音でも子音でも、どうしても「得意・不得意」というものはどうしても起こりがちで、
「全ての母音・子音で同じ音量、音域を出せるか」「雰囲気を壊してしまうような音色を出してしまう母音・子音はないか」「極端に響きの悪い母音・子音はないか」「音程が狂ったりブレたりしやすい母音・子音はないか」…
などを考えていくと、なかなか難しいものです。
この辺はなかなか自分一人では確認しずらいので、できれば指導者などのアドバイスもほしいところですが。


とりあえず、
・苦手を克服する!
もしくは
・得意を徹底的に磨いて、その感覚で苦手なものもなんとかする!
という感じで目的を持って練習すると、実のある練習になります。



○実践例の紹介


この前、広瀬香美のボイトレ本、「広瀬香美の歌い方教室」を買いました。
これね↓。
「広瀬香美の歌い方教室」新刊が4/16(土)発売になります 内容詳細→: 広瀬香美の心とろける音楽の時間


…この本で紹介されてる発声練習フレーズは「Hi」での発声がメインです。
何故かというと、この本で基本の基本として書かれている発声のポイントが、
「息をたっぷり使う!」→そのための「H」
「笑顔、口角を上げて歌う!」→そのための「i」
だからだと思われます。


と、こんな感じで、発声練習の一見わけがわからない「まー↓まー↑まー↓」とか「やややややー」とか「まーりーあー」とか、そういったフレーズにもしっかり意味があるのです!
(まあ、何も考えないでやってる人も多いんだけどさ…特に合唱人は…)
なので、その「意味」や「ねらい」を意識して発声練習すると、練習がものすごく効率よくなります!
脱・発声初心者を目指すなら、ぜひ意識してみるといいでしょう。


Speech Level SingingのPodcastを聞いてみた - 烏は歌う
では、本当に「意味」「ねらい」に満ちたボイストレーニングを紹介しています。
これ、ボイトレやるだけじゃなく、しっかり読みこめば発声練習の「組み立て」のお勉強としても本当に良い教材です。