「手」を使って声をコントロールしよう

さて、このブログでは何度も「身体を動かしながら声を出そう!」ということを書いていますが、今回は「手」について。



○なぜ「手」を使うのか?


発声時に手を使う理由を考えてみると、
まず、「手」を動かすと、腕を通じて「背筋」に影響を及ぼすことができる、というのがあります。
背筋のあり方というのは、声のあり方に大変強い関係がありますので。
つまり、手を動かすことで声を「身体的」「肉体的」に強化したりコントロールすることができます。


また、「手の動き」というのは「感情の動き」と強い関係があります。
話してるときに感情に熱が入ってくると、ついつい手が動いてしまう…ってこと、ありませんかね?
それを利用して、手を「それっぽく動かす」と、その手の動きに応じた「感情表現」が自然と声に現れてきます。


さらに、手はかなり自由に動かせるので様々なイメージを表現できますが、「手でイメージを表現しながら声を出す」ことで、「声でイメージを表現する」手助けにすることもできます。



○拳を握って声を出してみる


手と声の関係を実感するためには…
例えば、「拳を強く握って」声を出してみましょう。


…いつもより、「力強い声」が出ませんか?
息漏れが少なく、輪郭のはっきりした、力強い声が出やすくなるんじゃないかな、と思います。
表情なんかも、知らず知らずのうちに「キリッ」っと引き締まったりしてね。


さらにね、適度な遊び心を持ちつつ、「強く握った拳を振り上げたりしながら」歌ったり語ったりしてみましょう。
…歌の一番盛り上がるところを歌う演歌歌手や、スポーツの熱狂的なサポーターや、大観衆を前に演説する某総統とかをイメージしながらね(笑)。
この動きをノリノリでやることができれば、声は「力強い」どころかもはや「熱狂的」「煽動的」「攻撃的」な色あいを帯びて、聞く人の心を大きく揺り動かすような声になるかもしれませんね。



○知らず知らずのうちに手に力が入ってしまうときは…


手を使って力強い声を出す方法を上で書いてきましたが、逆に、「ソフトな印象の声」を出したい!ってこともすごく多いですね。
人の印象が「攻撃的」であるより「平和的」である方がよっぽど「魅力的」なのが今の日本ですし。
なにより、「力み」のある発声ってのは疲れるし、喉を痛めやすいですし、音域なんかも狭まったりしますし。
高い声も低い声も、力めば力むほど出なくなりますし。


でも、
「肩の力を抜いて、いつも優しい声を出していたいのに…いつの間にやら拳を振り回してキンキン声で叫んでた!」
なんてことは無いでしょうか。
我が家ではよくあります…「鍵をどこにやった!」「キッチン近くを通るなら、使ったコップを持って行け!」とかついついキツい声を出したり出されたり(笑)。
スピーチや歌でもこれはありがちな失敗で、「癖」や緊張や疲労によっていつの間にか拳を握ってしまって、その気は無いのに「攻撃的な声」「疲れやすく音域のせまいキンキン声」になってしまう…というのはよくありますね。


それを防ぐ裏技があります!
…手で、「きつねさん」を作りましょう。ちょっと緩めに。
はい、本気で言ってます(笑)。
それでもなかなか力が抜けない場合は、きつねさんの口を自分の声に合わせて、ぱくぱく動かすのもいいですねー。


この、中指・薬指を曲げ気味、人差し指・小指は伸ばし気味…という手の形は、腕とかに力が入りにくい形らしいんですね。
刃牙クラスタの人には「愚地独歩の菩薩拳」と言えばわかってもらえると思います!このブログの読者に刃牙クラスタがどのくらいいるかは疑問だけど!
合唱クラスタの人向けの説明としては、「指揮棒を使わない場合の基本・初心者向けの手の形」として「ゆるいきつねさん」が紹介されていることもありますよ、と。変な力が入らないから、たくさん振ってもそんなに疲れないし、拍もズレにくいんですって。
あと、こないだテレビを見てたら、「ミラクルひかる」のマイク持っていない方の手の形が「ゆるいきつねさん」でした。
歌を歌うとき、余計な力がちょっとでも入ってしまうとすぐに大崩れしてしまうわけですが、手の形が力を抜くのに最適な形だったのが面白いなあ…と思って見てました。
特に、宇多田ヒカルみたいな「ハスキーボイス」かつ「小技をたっぷり使う」タイプの声・歌は、本当にちょっとでも力んでしまったらできないと思います。
(私が見たものとは違うけれど、一応動画を貼っておきます。20〜30秒あたりがわかりやすいです。)


あと、それ以外の理由として「精神的にも力が抜けやすくなる」というのもありますね。
なにしろ…「きつねさん」です。この素晴らしい「まぬけ」さ。
手できつねさんをつくりながら、「威厳に満ちた怒鳴り声」とか、出せるでしょうか?不可能ですね。
手の形をちょっと変えるだけで、自然と笑顔になり、自然と力が抜け、自然といきいき明るい声になる…なんて便利な。
テンパったり、イラッときたりして、拳は固く閉じられ声が重く鋭く固くなってきたら…ぜひ手にきつねさんを。
きつねさんは、いつでもあなたの味方です。



○他にもこんな手の使い方が…


基本的に、「心や身体の有り様の、そのまんまその通りの声が出る」というのが発声の基本です。
なので、「手」の形や動き、それによるイメージの通りの声が出るわけです。


真っ直ぐ声を出したければ「遠くの何かを指差す」とか、声を揺らしたければ「手を揺らしてみる」とか、声を力強く飛ばしたければ「殴ったりものを投げるようなジェスチャー」をしてみるとか、荘厳な声を出したければ「お祈りのときの手の形」にしてみたり…
やりようは本当にいくらでもあります。


だいたいの「プロの歌い手」というのは、ジャンルを問わず「手の動き」というのが豊かな場合が多いので、お手本にするといいです。
「声そのもの」だけでなく、「身体の使い方」にもぜひぜひ注目しましょう。
幸いなことに今の時代、ネットをちょっと漁ればものすごい量の動画を見ることができますからねー。



○手で音程をコントロール


あと、忘れちゃいけないのが、これ。


例えば、「胸の高さあたりを最初の音」などと適当に決めて、音が上がるほどに手を上げ、音が下がるときは手を下げる、とか。
空中に楽譜を書くようなイメージで。
実際に楽譜とかを見ながらやってもいいですし、「わたし音感も無いし楽譜も読めないしー」レベルで「さっきの音に対して上がったか下がったか、その幅は大きかったか小さかったか」だけを意識しながらデタラメ気味に手を上下させても意外に効果がありますし、やってるうちにどんどん慣れてできるようになってきます。
自分の練習したいその歌でやってもいいですし、「きらきら星(ドドソソララソ…)」「かえるの歌(ドレミファミレド…)」などの「階名(ドレミ)」が広く知られている簡単な歌でやってもいいです。
…こういう「音感トレーニング」というか「音程トレーニング」の方法があるんですね。
ポイントは、「上がるときは思い切りよく、下がるときは慎重に」です。


もっと手軽な手の使い方としては…
例えば、「いつの間にか音程がずり下がってくる」という悩みを持っている人って多いと思います。
そんなときこそ、手の出番。
手のひらを上に向け、目の高さに置き、それの上に「何かが乗っている」イメージ。そして、それを「絶対に下げない、落とさないぞ!」と言い聞かせるとか。
真上を指差し、ときどきさらに「上へ上へ」という感じで動かしてみる、とか。
逆に、「ずり上がり」が問題なら、「風船のひもを目の前でつかんで、それを絶対に離さないように」というイメージを持ってみる、とか。
「頭の中だけで意識し続ける」ってのは、言うまでもなく非常に難しいのですが、「手」を使ってイメージを補強するような動きをしてみると、かなりの長さ、かなりの強度でイメージを保ち続けることができます。