ここで、あえての「いい加減」なボイトレのススメ。

さて、前回の記事では、「声をつくってはいけない」という話をしました。


「声をつくらない」ということについて - 烏は歌う


…しかし、私たちはどうしても日常生活でも歌やスピーチなどでも無意識に「声をつくって」しまい、「素の声」というのを忘れがちです。


声をつくってしまう原因としては、「いい声を出したい」という思いが強すぎるとか、「格好をつけたい」とか、「威厳を保ちたい」とか…。
まあ、そう思ってしまうことはありがちで仕方ないことではありますが、そのせいで逆に「声の魅力」というものを見失っているかも。
他にも、「個性」や「ノイズ」や「間違い」を出すことを恐れて、弱々しく、自信なさげな、他人の顔色を伺ってばかりの、思い切りの悪い、消極的な…そんな声をつくってしまうこともあります。
こうなってしまうと、音色が魅力的でなくなってしまいますし、スピーチなら滑舌の悪さや全体的な印象の暗さにつながってしまいますし、歌なら音程のぶら下がりやリズムの悪さにもつながってしまいます。
そしてなにより、「目立ちたくない声」なのに、暗さとかのせいで逆に「悪目立ちする」ってのがなんとも悲惨です。


そこであえて、「いい声・カッコイイ声を出そう」とか、「変な声・間違った声を出したくない」とか、そういった考え・想いを一時的に捨ててしまいましょう!
それだけで、すごく楽に声を出せるようになったり、のびのびとした「美しい」声が出たりします。
抑圧してた、「意外な自分の声」に出会えるかもね。



○格好をつけるのを、難しいこと考えるのを、やめてみよう


まあ、格好つけるのやめよう!とか、言うのは簡単なんですが、実行するのはなかなか難しいです。
とりあえず、カタチから入ってみますか。


…こんな姿勢でね、「気取った声」を出すなんて、そうそう不可能ですからね。
「意識を変える」ってのは非常に難しいことなので、まず行動からはじめてみましょう。


チャトラ猫先生のブログから、まず紹介したいのは、この「ヨイドレ発声法」。
声量の概念を変える訓練「ヨイドレ発声」 - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

一人の部屋で、次の練習をしてください。
1 床に仰向きに寝る。
2 椅子でもこたつでも百科事典でも、近くの物の上に片足を置く。
3 もう一方の足は膝を曲げて床に立て、だらし無く開脚する。
4 髪を振り乱したまま片手で腕枕をし、もう一方の腕は適当にブン投げる。
5 発声法も呼吸法もクソクラエとつぶやく。(または叫ぶ)
6 演歌でもドドイツでも童謡でも良いから、口から出まかせに歌ってみる。
7 音程を 1/4音くらい故意に外し、歌詞もできるだけデタラメに。
8 勝手なところでブレスをし、視線は腐った魚のようなつもりで。
9 これ以上の音痴は居ないほどメチャメチャに1分ほで歌い続けてみる。


うちのブログだとこの記事とかね。
「全身を使った発声」になるためのトレーニング(逆転の発想編) - 烏は歌う

○だらしなく座って声をだしてみよう
適当にソファーにでも腰掛けて、リラックスして、歌でも歌ってみましょう。
猫背になったって構いませんので、背もたれに全体重を預けてしまいましょう。
足は適当に開いて適当に前に放り出し、前に机があるならその上に投げ出すのもいいでしょう。

○明瞭な発音とか、滑舌の良さとか、そういったものも忘れてみよう


「くっきりはっきり明瞭な発音を出さなければ!」みたいな意識でいると、顎を中心に発声・発音に関わる器官が力んで固まってしまって、逆に発音・滑舌が悪くなってしまうこともあるのです。
…人前で話したり指示や説明をしたりすることが多くて責任感が強い、「委員長タイプ」や「優等生タイプ」や「お偉いさんタイプ」の人は、こういう声の出し方が癖になってる人が多いような。
あと、「口をはっきり動かして!あ!い!う!え!お!」みたいな発声練習は、効果も大きいけれど副作用も大きいので、こういう練習を並列でやるのがおすすめです。


これについても、チャトラ猫先生のブログに面白い記事があって。
9 遺伝子操作の奇跡 “ドドドちゃんの場合” - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

「ドレミファソラシドの子音を全部、曖昧な「d」にしてやってごらん。ドデディダドダディドってね。これは慣れてしまうと簡単にできるよ。君の名前はこれ以降『Tomoko』じゃなくて『Dododo』ちゃんね…」
 考えてみれば簡単なことである。アンニュイな雰囲気のスキャット「ダバダバディビドゥブ」などは、子音「d」や「b」を曖昧に発音することで、顎への加圧を避け、攻撃的な前傾姿勢や舌根の疲労を回避する良い練習方法だ。「合唱表現」を「ダッドゥオドォドゥエン」と発音する要領である。
 正確な発音と一口に言っても、たとえば「ア」と「オ」との中間にはほとんど無限の音色が存在する。貴方自身の本当の声を知りたければ、曖昧母音・曖昧子音の研究を怠ってはいけない。「ダッドゥオドォドゥエン」という曖昧な発音をしても、誰もが「合唱表現」と聞き取るような表情・姿勢・存在感等々…それをさがそう。


うちのブログだと、これとか。
発声についての色々な問題が解決するかもしれない、「母音」のボイストレーニング - 烏は歌う

○曖昧母音で遊ぶ

定番の発声練習である「あーえーいーおーうーおーいーえーあー」(音程はつけてもつけなくても良し)を、
・口を「正しく」しっかり開き
・あごの開き具合は一切変えずに
・「あ→え→い」は「舌」の動きだけで母音を変化させる
・「い→お→う」も「舌」の動き、できなければほんの少し「唇」をすぼめることで母音を変化させる
という練習を、最近よくやっています。

やってみるときには、とにかくあごや首などに力が入らないように注意して下さい。
それと、軽く目を見開いてやると、喉の奥の空間が開いて少しやりやすくなります。
慣れてきたら、
・母音の変化を区切らず、できるかぎり「連続的」な変化になるよう目指す
ということを心がけます。

○歌をやっている人は、「正確な音程」なんてものも一度忘れてしまいましょう


「正しい音程を出さなければ!」という意識は、歌をある程度やりこんでいる人なら必ず持っているものだと思います。
しかし、その想いが強すぎると、音程をコントロールする筋肉が力んでしまったり、それをなんとか外からの力でコントロールしようとして顎や首の力みなどで無理矢理音程を変化させたり…という感じになってしまうことも。
そうなってしまえば、音程も悪くなりますし、声質もどんどん魅力の無いものになってしまいますし。
そこで、以下のトレーニングです。


10 禁じられたポルタメント - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

こうなると訓練法はやはりポルタメントです。5度でもオクターブでも構いません。オクターブに12個しか音が存在しないかのような練習方法には見切りをつけて、徹底的にポルタメントで上下させましょう。最初はどうしても音階を歌ってしまいますが、階段の無いノッペラボウの坂道を行ったり来たりさせてみると、あ〜ら不思議、今までは気づかなかった俗に言う「声区の転換点」などが全部炙り出されて、ぞろぞろと目白押し!
 坂道のはずがガクンガクンとエンスト寸前のギヤチェンジ。正確さにこだわって、器用にごまかして音程操作をしていた自分に、気づくことから始めてみませんか?


声帯のストレッチ…音程を微調整する筋肉を目覚めさせる方法 - 烏は歌う

なので、イメージ通りの声を出すためのボイトレとして

「滑らかに、無段階に、(音楽用語で言うとグリッサンドで)低い音から高い音まで、行ったり来たりする」

というものがあります。

そうすることによって、微妙に音程を調節するための筋肉がスムーズに働くようになります。

○最後に


「いい加減」は「良い加減」!
…ってのはすでに言い尽くされた言葉ですが。
ボイトレでも、これは真実だと思います。


あと、「加減」ってのも大事ですね。
「絶対的な正解的なもの」としての「良い声」ってものを求めてしまう時期というのはだれにでもあると思いますが、「そんなのねえよ」と気づくのもまた、誰にでもあることだと思います。
そのときに必要になってくるのが、「加減」。
その場その時で、出来る限り最高なものをつくろう、と思ったら、その場その時に合わせて微妙に絶妙に足したり引いたりしながら「いい加減」を探っていかなければなりません。
そのときに、「かっちり」練習してきた人や「絶対的な正解」を求めてきた人や「理想」を追い求めてきた人には、「加減」がなかなかできないんですね。
なので普段から、「いい加減」「適当」「曖昧」「ゆらぎ」…のある練習をやっておくのも大切だったりします。