「あくびの喉で」「喉を開いて」発声する、ということについて質問に返信。


○ご質問

喉を開くがよくわかりません。・・・良ければ下の質問に答えていただけるとありがたいです↓
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1167600346


具体的な質問は少々長いので省略です。
要するに、「喉を開く→あくびの喉で発声する」というのを試してみたが、しっくりこない…という感じです。



○回答した


結論から言うと
・やりかたとしては、だいたいあってる
・けど、下あごがガチガチに固まってしまうのは少々やりすぎかな
・そういう風にあごの下をふくらませて歌う人もいるし、そこまではやらない人もいる。程度問題。
という感じです。


以下詳細。

1.基本的に、発声指導の定番用語の「喉を開け」とか「喉に力を入れるな」とか「腹から声を出せ」とか「脱力しろ」…とかは、実際に起きている状況に基づいてなかったり、「感覚」と「実際の現象」にずれがあったり、発声に詳しい人の中でも共通見解が無かったり…と、非常に雑に使われがちな言葉なんで、かなり丁寧に定義とか具体例とかを詰めていかないとほぼ確実に矛盾します。


2.とりあえず、「喉を開く」とは、「喉仏を下げる」+「軟口蓋を上げる」という状態を指すことが多いです。なので、とりあえず喉仏が下がっているのは確実なようなので、「喉を開く」ことにはある程度成功しているかと思います。


3.「喉を開く」のは良い発声にとって大切ですが、「開けば開くほど良い」ってもんでもありません。「声楽のごく一部の系統の発声法」だと限界近くまで喉仏を下げる場合もあります(オペラ歌手の独唱動画を見るとあごの下がすごいことになっている人も居るのがわかると思います)。
が、それ以外の場合なら「普段より少し下げる」「声を出しているといつの間にか喉仏が上がってくので、そうならないように普段の高さに保つ」…くらいがちょうどいいです。


4.まあ、声楽をやらない人でも、ちょっと練習して「喉仏の下げ方」を知ったり、「引き下げ筋」を鍛えたりすると、いざ喉仏が上がりがちになってしまったときに対処できるので、「限界まで下げてみる練習」も効果がないことはないです。


5.「喉に力を入れるな」と言うのは発声のありがちな指導語ですが、本当に100%喉に力が入らなければ、そもそも声が出ませんし、声をコントロールすることもできません。当たり前ですが。
「喉に『余計な力』を入れるな」…というのがより正確な言葉遣いかと思いますが、どんな力がどの程度なら『余計な力』なのか、というのは少々答えるのが難しい問いです。


6.とりあえず、「喉仏を下げる力」に関して言えば、
・喉仏の下(首の前面下部)の筋肉が縮む
・下あごの骨の内側の柔らかい部分が、喉仏に引っ張られて「膨らむ」というか「張る」
というのは、あんまり『余計な力』であるとは言われませんね。…それすら余計だと言う人もいないことは無いですが。もちろんやりすぎはダメです。
で、
・下あごを開け閉めする筋肉が力む、自由に開け閉めできなくなる
・喉仏の両脇の筋肉(首の側面、歯を食いしばると浮き出る筋肉)が力む
・舌の付け根を下げたり、喉仏の方に押し付けたり、力ませて固めている
という状態なら、『余計な力』だと思います。



○余談


・あえて数字で6つほどの項目に分けましたが、「これだけの文章に、様々な質問・疑問が含まれているなあ…」と思ったからです。なかなか一筋縄ではいかないというか、全否定も全肯定もしづらい感じ。


・他の回答者も言っているとおり「あくびの喉」は「発声練習用の一時的なもの」「あくまで『喩え』」で、普通は実際にこのフォームで発声するわけではありません。が、「あくびの喉こそ発声の基本形!」とガチで思っている人々も結構います。特に、アマチュア合唱界やアマチュア声楽界や、そっち系で半端に発声を噛じったクラスタ。まあ、もちろん、そういう発声が求められる場合もなくはないです。


・あとはまあ、最終的には個人の好みとか目標とかによる。とにかく声を「深く」したい!と思うんなら喉仏はガッチリ下げた方が手っ取り早いですし、POPS的なナチュラル志向の声作りを視野に入れるなら喉仏はあんまり下げないし。あんまり深い声は作らないから喉仏を下げる必要はないかな…という方針をとったとしても、「一応喉仏の下げ方もおぼえておけば、なんかの役に立つかなー」と思うか、「変な癖とかつけたくないし、余計なことは一切やりたくねえ!」と思うか。極端な答えを出さない限りは、どれも正解だと思います。


・ちなみに私は、「喉仏をとにかく下げろ!あくびの喉で!」ってのを一時期間に受け過ぎてしまって失敗したタイプ。
「真似」による「学び」…の落とし穴。 - 烏は歌う
でも、この時期を経たおかげで色々学んだし、「喉仏の上げ下げで声質を使い分ける」とか「喉仏を落とすことで、声質が浮き上がりすぎないコーラス用の声を出す」とかの小技も使えるようになったので、結果的にはそんなに損はしてないかな、と。


・あとはまあ、知恵袋の回答で今回現れた回答者達は「のどの下が膨らむくらい喉仏を下げる」ことは全否定気味だけど、そういう発声だって世の中には無くは無いんだからね!
学ぶって楽しい!!|一岡瑞希 official blog