声量は「自分一人」だけでは決まらない。


まわりとの兼ね合いが大事、というお話で、前回の続き。


声量、それ自体はあんまり大事なことじゃないかもしれない。 - 烏は歌う



○まわりが賑やかだったり、静かだったりすると…


まず知っておいて欲しいのが、
まわりがうるさいと、出てくる声は自然と大きくなり、
まわりが静かだと、出てくる声は自然と小さくなる、
という人間の習性です。


詳しくは、作曲家で合唱指揮者の長谷部雅彦氏のブログエントリをどうぞ。


聞こえる音と出す音の関係: アルス・ポエティカ〜音と言葉を縫いつける


私のまわりにも「声が小さいのが悩み…」という人がたくさんいるんですが、
「本当に声が小さい」のか、
「まわりが静かなところで大きな声を出せない」のか、
…という問題が必ず生じてきて、ここをはっきりさせないと解決はできないわけです。


前者の場合、普通に声量を上げるためのボイトレを地道にやっていくしかないので、ある意味解決法はシンプルです。


後者の場合…
・まわりの人が大声を出していれば、自分も大声を出せる
・でも、まわりの声がうるさいから「大声を出している感覚」をつかむことができないし、自信も自覚もつかない
・「みんなで声を出してるとき」は特に問題無く、漫然と無意識に大きな声を出せている
・だけど、まわりが静か、とか、自分一人で、とかになると大きな声が出せなくなる
・どれだけ「自分にとっての最大声量」を向上させても、まわりが静かだと最低に近い声量しか出せないので、発声練習してもあんまり効果が無い
…などなど、どう改善したらいいかわからない、非常に困った状態になりがちです。
大学の合唱団にいたころは、そんな感じのヒョロいソプラノ達に「やればできるのに、なぜやらない!出せば出るのに、なぜ出さない!」と何度怒ったことか(笑)。
しかもこの「まわりが声を出していないから自分も声を出せない」症状の一番最悪なところは、声量の小ささがまわりの人にも「連鎖」しちゃうことで、こうなってくるとついでに「不安感」とか「劣等感」とかのマイナスな感情が蔓延しがちになります。


こういう状態をなんとかするためには、大きな声を出すための姿勢や呼吸筋などの強さといった「フィジカル」と、声を出すための「テクニック」を磨くだけでなく、「メンタル」面も鍛えなければならないので、本当に大変です。
・とりあえず大きな声を出すことに慣らす
・大声を出すことに抵抗感をなくすための工夫をする
・失敗の恥ずかしさや声に対するコンプレックスを乗り越えられる練習環境作り
・大声を「ださなきゃいけない」環境をつくって、それに対応させる
…などなど、様々な工夫が必要となってきて、本当に難しい…。
だれか、これに対する実践プランを持っている読者がいたら、ぜひコメント欄に!(笑)


私ならとりあえず、
「わざと大きな声で話しかけたり、まわりを騒がしい雰囲気に導くことで、相手の大きな声を引き出す」
「できる限りの話術を駆使して、失敗に慣用なおおらかな雰囲気や、チャレンジ精神を刺激する雰囲気を作る」
「大きな声が出せてたら、それを指摘して褒めつつ、大きな声が出せるんだ!ということを自覚させる」
という3段構えで行くかなあ…ちょっと抽象的だけど。


あとはまあ、プロのボイストレーナーさんの記事だと、こんなのとか。


6のB 合唱練習の常識・非常識 - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

合唱団員の声の特徴の最たるものは、「決してはみ出さない」ことである。禁欲的とか謙虚な、というのは丁寧すぎる言い方で、実は「目立つくらいなら、舌噛んで死んじゃう」くらいにシャイな発声なのだ。
プロの歌手はシャイではない。プロアマを問わず劇団員は…むしろはみ出し過ぎる声である。そして驚いたことにアマチュア合唱団員の多くは、普通の生活では明るく伸びやかな会話のできる人が多いのだ。
この落差はいったいなんだろう!?

コンクール間近の合唱団など、煮詰まってしまった練習風景に出くわしたとき、私はしばしば次のように提案する。
「指揮者を鼻で見て、できるだけ生意気な表情で歌ってごらんなさい」
「脚を前後に開脚して、後ろ足に重心を置いて歌ってみましょう」
声楽発声の姿勢の基本は「傲慢なほどに美しく、しかもゆとりを感じさせる姿」である。その姿勢を基準点として、自由にしなやかに自然な揺らぎを保たなければならない。

○その他、まわりとの兼ね合い


まわりで鳴っている音と声量の関係として、
「まわりの音と被ってしまうと声量は小さく聞こえる」
「まわりの音と被らないように気をつけて声を出すと、目立って実際より大きな声量を感じさせる」
というものがあります。


…例えば、
「幼稚園児が多数ギャンギャン騒いでるところに大人が甲高い声で叫んでも、全然子供たちの耳に入らない」とか、
「バンドの凄い声量があるはずのボーカルがいても、楽器隊の音のセッティングが間違って過度に倍音域やエフェクトがボーカルに被っちゃうと、ボーカルの声が全く聞こえなくなる」とか。
高さとか、声質とか、喋る速さとか…そういったものが、上手く「被らない」ように気をつけるのが声を効率よく届けるコツです。


あとは、過去にも書きましたが「空間」によって「響き方」というのが全然変わってきますので、「どこでどう声を出したら楽に大きく聞こえるのか」というのも大事だったりします。


声と環境について、その1。 - 烏は歌う


声と環境について、その2。 - 烏は歌う


ただ「声を大きくしよう!」という方向のボイストレーニングも大切なのですが、効率良く声を届ける工夫を考えること、どのような声が効率良く使えるのかを考えること、それがとても大切です。