声に「表現力」を出すために、手っ取り早い方法。


前回に引き続き、「表現力」なるものについて。
…年末年始はいくら更新してもアクセスがガタ落ちするんだけど、まあいいや(笑)。


ありがちな失敗


話や歌など声を使って何かを伝えようとするときに、「表現力」を出したい!…となったときに、普通の人がすることと言えば、「表現したいものをイメージする」ことがまず最初でしょうか。
声を出すときに「イメージ」はとても大事ではあるんですが、「ただイメージするだけ」で声に「表現力」が出てくるかと言えば、それはちょっと難しいですね。
最悪、「単なる妄想」で終わってしまって、伝えたいものが全く声として現れてこない…という失敗はとてもありがちです。


そこで、声の「具体的で細かい要素」をいじっていく必要もあるわけですが…ここにも落とし穴が。
音量、音の微妙な高さ、スピード、息の勢い、溜めの長さ、息の混ぜ具合、声を響かせる位置…などなど、無数にある「具体的で細かい要素」を自在にコントロールできればいいのですが、声をコントロールすることにいっぱいいっぱいになってしまって「表現したいもの」が逆にボヤけてしまったり、コントロールする要素の偏り・不自然さによって全く違ったものが伝わってしまったり…というのもありがちな失敗です。
例えば、「音程が絶対下がらないように!」という意識が強すぎて、なんだか暗い顔になってしまって、音程は正しいのに「何か低い気がする」と言われたり。
例えば、「明るく元気よく」声を出しているつもりで、声量を大きく、ハキハキと声を出したら、何故か「乱暴で攻撃的な声」になってしまったりとか。


したい表現にあった表情をし、身体を動かそう


手っ取り早く声に「表現力」を出すために、最も大切なのは「表情」です。
表情筋というのは、声帯を動かしたり、声を響かせる場所の様子を変えたりする筋肉と密接に関係しているので、表情が変わると大きく声が変わり、「表現力」がつきます。
また、声が変わるだけでなく、「口調」や「歌いまわし」といったものも自然と適切なものに変わってくるんですよね。


(もちろん、+αレベルの語り手・歌い手を目指す人は「表情」やらあとで紹介する「身体の動き」やらだけでは全然足りず、意識的に計画的に細かく声をコントロールする必要があるのだけれど、それ以前の話として、しっかり「表情」ができてる?というレベルのお話なのでご注意をば。)


例えば、「悲しい声」を出したい…というときに、心の中だけで「悲しい気持ち」になっても、ちょっとしか声に現れてこないという可能性があります。
また、「悲しい声を出すには…音量は小さく?響きは暗めに?音程はちょっと低めにとって?声帯の張りは?響きの位置は?…」とか考えても、ぴったり思い通り「悲しい!」という声になるかといえば、また、計画した通りに完全にコントロールされた声が出せるかと言えば、慣れないうちはなかなか難しいでしょう。
そんなときに、「悲しい顔」をしてやれば一発で自然と「悲しい声」「悲しい口調」「悲しい歌いまわし」になるんです。
これは別に「悲しい」に限らず、「嬉しい」でも「楽しい」でも「優しい」でも「穏やか」でも「ほんとうは寂しくて別れたくないんだけど、でも強がって言えなくて、口元はがんばって笑っているように見せているんだけど目が全然笑ってない」でも(笑)、なんであろうと基本的には「表情通りの声が出る、表情通りの表現になる」と考えていただいて大丈夫です。
なので、声に「表現力」を持たせたいときには、まずは「表情」を気にしてみるといいんじゃないでしょうか。
とりあえず、「ボイトレに鏡は必需品!」というのは憶えておきましょう。


他にも、表現したい声をイメージしながら身体を動かしてみると、その通りの声になりやすいです。
適度な身体の動きは声帯まわりの筋肉をリラックスさせる効果がありますし、身体を動かすことで「イメージ」の具体性や強さが格段に増しますし、適切な身体の動きで目に見えない声帯の筋肉をコントロールして思い通りの声を出す手助けをすることもできます。


例えば、「まっすぐ声を出したい!」「レガートで歌いたい!」って時に、「手で宙にまっすぐな横一本の線をゆっくり定速で描きながら声を出してみる」とか。
例えば、「微妙な音程をしっかりきめたい!」という時に、「手で音程に合わせて、上!下!と動かしてみる」とか。
例えば、内股になって手をヒラヒラクネクネさせながら声を出すとどうしても「オネエ口調」になりますし、がに股になって拳を握ってブンブン振り回しながら声を出せばどうしても「熱くおカタい演説口調」になりますね。
例えば、重心を前にして前のめりになって声を出せば「圧迫感や緊張感のある表現」になりますし、重心を後ろにレイドバックな感じで声を出せば「開放感やリラックス感のある表現」になりますね。
こんな感じで、身体を動かすことによっても声をコントロールし、声の「表現力」を増すことができます。
なので、したい表現にふさわしい身体の状態、身体の動きになっているか…というところを気をつけましょう。


余談だと、大晦日Twitterで、紅白の平井堅の手の動きがちょっと話題になってて。
平井堅の手を固定した状態で歌わせてみたい。声量に差は出るんだろうか。」とかつぶやいてる人とか、「妻が平井堅が手で音をとってるって言うんですが、本当ですか!?教えて!エロい人!」とかつぶやいている人が居たり。
それに対して、昔なんかの音楽番組で、平井堅本人が「手を動かさないと音痴になる」と言ってたらしい…と教えてもらったり。
そのどさくさに紛れて、私も実は手を動かさないと声に出る音感がガタガタに崩れるタイプだということを告白したり(笑)。
プロの語り手・歌い手は、ジャンル問わず、「表現のプロ」と呼ぶにふさわしい、効率よく表現力を高める表情・身体の動きをしていることが多いのです。
「変なヤツ」「挙動不審」と思わず、ぜひその表現手法を学んでいただきたい。


さらに余談だと…またも愛しく憎い合唱界に向けてのシャドーボクシングになっちゃうんだけどさー。
合唱の人ってこう、「(コンクール合唱的に)正しい姿勢で直立不動!」「(コンクール合唱的に)正しい表情で固定!←一般人から見ると超変顔」「『はずかしくない』表情・姿勢・お行儀の良さでお澄まし」みたいな人がどうしてもいてさー。
そんな顔や姿勢で愛を歌ったって絶対モテねえぞー、と。俺が言うのもなんだけど。
そんなじゃ絶対なんにも気持ちが伝わらねえぞー、と。
もっと心のままに、リズムにのって、表現が求めるままに身体を揺り動かそうよー、歌いながら直立不動とか逆に超不自然だよー、と。
某「ちじょうのらくえん」的なマスゲームがやりたいならそれでいいんだけどさー…そんなのがやりたいんだっけ?俺達。みたいな。
「もっとこう、自由にやらない?」と、「どうやったらあなたの心の底からの、全身からしぼり出すような表現を見せてくれるの?」と、そんなことばっかり考えちゃいます。