「深い発声」ってなんなんだろう…母音と舌の形


まあ私自身「声の深さ」については完全に模索中というか数年単位で迷子なので、探り探り書くエントリなんですけどね。

深い発声


「深い発声」…という言葉は、合唱界隈ではよく聞く言葉ですが、
「具体的・論理的に一体どういう声が深いのか?」
「どうやったら深い声が出せるのか?」
という問題には、なかなかまっとうでわかりやすい答えに出会えなかった、という印象が強くあります。
…まあ、俺が馬鹿だっただけなのかもしらんがね!!


私の場合、大学から本格的に合唱はじめたせいもあるし、高校時代はファルセット使いまくりで自然とそこそこ「深い声」が使えてたから「まっさらな初心者」のときにあんまりみっちり教えこまれなかった、という理由もあるかなー。
で、「具体的・論理的に一体どういう声が深いのか?」という問いに答えが得られず、高校合唱経験者に「難しいことは言えないが、とりあえずお前のその声は深くない!」みたいな感じの指導を受けて、その辺の連中の声のダメなところだけ真似てしまったり、「どうやったら深い声が出せるのか?」という問いに答えが得られず、「○○な声の出し方をイメージして!」みたいな指導を受けて、とりあえずイメージしてみるんだけど上手くいかずにチグハグな声になってしまったり。
で、挙句ひねくれて「もー知らねーよ!!」となってしまい、悪い先輩と「一切合唱するつもりの無い声」で色々やってみたりとかね(笑)。とてもいい経験で、それはそれで良かったなあ、と思いますが。


深い発声=深い母音、と、とりあえず考えてみる


とりあえず自分の混乱の歴史を考えてみるとね、「深い発声」って言っちゃうのが、まず不味い。
「発声」って言っちゃうと、それこそ「息を吸って、息を吐いて、その息が声帯を振動させて、喉の奥で共鳴されて調音されて云々云々…」と、範囲が広すぎなので、「深い発声をしろ」と言われると、どっからどう手をつけたらいいかわからなくなるわけですな。


なので、こう考えましょう。
「深い発声」=「深い母音」
である、と。
だいたい、一番問題になるのってそこだと思うんで。
いやいや深い呼吸が…とかは一旦忘れましょう。
で、母音を整えてみてそれでも「深く」ならないようなら、他に問題が見えてくると思うので、それはその時潰していきましょう。


母音の出し方について


で、「深い母音」について考えるときに、是非知っておいて欲しいのがこれ。
合唱作曲家の佐藤賢太郎さんのサイトから引用します。


-Wiseman Project- 作編曲家・指揮者 佐藤賢太郎の公式サイト 「ケンピー (Ken-P) のサイトへようこそ!」

私は、IPA(International Phonetic Alphabet、いわゆる発音記号)を使いながら発音の指導をしていますが、アメリカでは、ほとんどの合唱指揮者や歌の指導者はIPAを使いながら音声学にのっとった発音の指導をしており、とても論理的であり効果があります。ここでは、詳しく述べることができないので残念なのですが、まず、みなさんはせっかく合唱(歌)をやっているのですから、それらの元になっている自分の音について、普段から意識を高く持つ心がけをしてみてはいかがでしょう?


ちなみに、以下が私が指導で使う母音のIPAです(もちろん他にも子音があります)。口語日本語から、そのままクラシックのスタイルの歌に使える可能性がある母音は、大体の場合「お(O)」だけです。アメリカでは「英語はアメリカの合唱団にとって一番難しい言葉だ」とよく言われます。自分が普段話している言葉だからこそ、自分の癖というものが出てしまうのが母国語です。日本語を歌う時には、個人の「日本語」というものを一度白紙にもどし、合唱団として、音楽スタイルと発音から音を再構築するくらいの気持ちで望むと良いでしょう。



図の縦軸は口の開き加減、横軸は舌のどの部分が一番高くなるか、というパラメータです。
もっと詳しく知りたい人は、Wikipediaの「母音」についてもどうぞ。
母音 - Wikipedia


鍵は舌と口の開き


つまり、「口の開き」と「舌の動き」なんですね、「深い発声」をするのに一番大切なのは。
特に、他人からはちょっと見えにくくて、指摘されたり真似したりしにくい「舌の動き」が「深い発声」をするための鍵と言えそうです。


口語日本語の発音は「あ・い・え」が「前舌母音(舌の前の方が高くなる、前の方でつくる母音)」であり、口語の「う」もちょっと合唱で使うには「深くない」母音なわけです。
なので、母音を全体的に「後舌母音」気味に変えてやると、合唱向きの声になる…ということらしいんですな。


よく、「深い発声」をさせようとして、「喉の奥の方を大きく開いて!」とか「声を前に出さず、後ろや真上から出すつもりで!」とか「ナンコウガイを上げて!」とか言う指導語をよく見かけるけど、正しい舌の動き(後舌母音)ができてない状態でそれをやると、実際苦しい。
で、喉やら首やらに変な力が入ってしまって、似非オペラ風な喉声になってしまったり、特定の母音で深さを維持できなくて爆発しちゃったり、全力で頑張ってるのに声が浅いって言われるもうやだこの合唱…ってなっちゃう。
舌の位置や形を正しくセットし、「深い母音」ができてから、「喉の奥の方を大きく開いて!」とかやると、より響きが整っていい感じになります。
まずは、正しい舌の状態が先かな。


注意点


喋ろうとし過ぎて力んで舌先が浮いてしまったり、声を深くしよう力み過ぎて舌全体が喉の奥の方に引っ込んでしまう…というのはよくある話ですが、それではダメですよ、と。

さて、全ての母音の発音において、一番重要なことは「舌は常にリラックスしていること」です。クラシカルな合唱の母音発音時には、舌先は「常に舌前歯と歯茎の境目あたりにについてリラックスしている」のが理想です。特に日本語で「い」「え」「う」の発音のときと、高音域の発声の時に、舌先が宙に浮く人がいます。

子音との組み合わせでは特に「り」または、ラテン語で「ri」「ry」の発音時に、R(はじくR、Flipped R)の発音の舌の形が解除されないまま(舌が上がりっぱなしのまま)、母音の発音に移行して、妙な発音になってしまっている合唱団が多くあります。特に気をつけましょう。

ポテト・サウンドとは「ジャガイモをのみこんだようなフガフガした声、子音や母音が不明瞭な声」のことを言います。口の中が拡張させたのはいいのですが、子音の発音が不明瞭だったり、舌が奥に引っ込んでしまったりするとこのような音になります。