そもそも声帯って何のためについているのかと言いますと。


「声を出すため」…だけではないんですね。
声帯には、もう一つ誤嚥(気管に食べ物や飲み物が入ってしまうこと)の防止」という大切な役割があります。
ものを飲み込むときに、気管への通り道を閉じ、気管や肺にものが入ってしまわないようにする仕組みが人間の身体には備わっています。
その仕組みはかなり重要なので何重かになっていますが、その「門番」のうちの一つが「声帯」なんですね。
緊急時に強く閉じることで気管への異物の侵入を防ぐ、というのが、声帯の大切なお仕事です。


なので、歳をとって声帯がスカスカになってくると「誤嚥」がやたらと増えてきますし、それが原因で肺炎とかヤバイことになってしまったりしますね。
また、個人的な経験だと、「声帯が疲れきってるとき」って、むせ返ってしまいやすい気がします。


喉仏(喉頭)の高さと声帯


で、声帯ってものを「緊急時に気管をシャットアウトするためのもの」と考えますと、当然ながら「シャットアウト状態」になってる時には声が出せません。
まず息ができませんし、ガッチリ緊張して完全に閉じている声帯は発声のための「振動」というか「開閉」ができませんので。


なので、発声時には、極力「シャットアウト状態」=「ものを飲み込もうとしている状態」から離れることが重要です。


それで、では「シャットアウト状態」の喉に何が起こるかと言うと…
「ものを飲み込むときには喉仏(喉頭)が上がる」
という現象が起きるわけです。
なので、逆に言えば、喉頭が上がると、喉がものを飲み込む状態(気管シャットアウト状態)に近くなりやすい」と言えるわけです。


喉頭を下げろ」と言われる理由とか


このような理由から、発声時の喉頭の高さについては
喉頭を上げてはいけない」
「喉仏は軽く下げたほうがいい」
と言われています。
ジャンルによって、どの程度下げるかはけっこう違うのだけれど、基本的には「安静時の呼吸時の高さ〜それより下」をキープしろと言われることが多い。
「あくびの喉で発声しろ」とか言われることが多いね。この言い方、私はそんなに好きじゃないけど。


よく発声練習の現場で使われがちな「謎の言葉」というか「感覚的・詩的(非現実的)表現」として、
「喉を開け、喉を閉じるな」
※「喉」って具体的に解剖学的にどこからどこまでのことだよ、それって開いたり閉じたりするのかよ、とツッコミたくなる
「息の流れを止めるな」
※そもそも息止まったら声は出てないよ、「流れ」ってどういうことだよ、とツッコミたくなる
「喉で声を出すな」
※もうツッコミ疲れた
…とか言われることがありますが、これが要するに「喉頭・声帯を」「気管をシャットアウトするモードにするな」という意味で使われていた場合は、喉頭を下げることで概ね問題を解消できます。
別の意味で言われていた場合は、また別の方法が必要になりますが、概ねこういう意味で言われていることが多いかな。


下げ過ぎの害とか


で、じゃあ、「喉頭は下げれば下げるほど良いのか」というと、それは違います。


喉頭を下げきっちゃうと声帯に関係する筋肉が固まっちゃってすごく不自由な声になりますし、いわゆる「響く場所」「共鳴腔」も喉頭を下げ過ぎると「むしろ狭まる」ことがわかっています。


無理やり喉を下げる行為に注意 : 喉ニュース


マチュア声楽かぶれとか、こういう「喉下げ過ぎ」な人が多いので要注意。


一時的に「喉頭を上げる」トレーニングとか


あと、喉が上がっちゃうと「声帯に無理に閉じようとする力が入りやすい」ので良くないのですが、裏を返せば
「声帯を(なりふり構わず)強く閉じることができる」
とも言えるので、一時的に「喉頭を上げる」トレーニングをすることがあります。
極度のハスキー・エアリーボイスの人とか、声が裏返るとスッカスカのファルセットやウィスパーになってしまう人に、「声帯を分厚くくっつけて発声する感覚」をつかんでもらうために、「一時的に」喉頭を上げた状態で発声練習してもらったりもするわけです。


何度も書きますが、あくまで「一時的に」だからね。声帯に負担かかるから。
ずっと喉頭上げたままで発声するわけではなく、ある程度感覚をつかんだら、今度は喉頭を下げる作業が必須だからね。


小ネタ、「ロリ声」「ショタ声」の出し方。 - 烏は歌う


喉頭の上げ下げの仕方


ある程度慣れてる人は、意識的に喉仏を上下させられますよね。


慣れていない場合は、首の前面に手を当てながら
・つばなどを飲み込む→上がる
・「い」の口をしたり、実際に「いー」と発声してみる→上がる
・あくびをするふりをする→下がる
・口を縦長に開けたり、低い声で「おー」と発声してみる→下がる
…とかを確認して、どこにどんな力を入れたら喉仏が上がり下がりするのかを確認しましょう。


それと、実際に発声するときに、「喉頭を下げよう!下げなきゃ!」とか意識すると、下げ過ぎ状態になってしまいがちです。
そういう時には、喉頭を意識するのではなく、「舌のかたち」を意識すると良いです。


声を出すときに
「舌先が高く上がると、喉頭が上がりやすい」
「舌先が低く下がると、喉頭が下がりやすい」
という対応関係がありますので、喉頭をコントロールしたい場合は、舌の位置に気をつけるといいでしょう。


合唱やってるとしょっちゅう話題になる「い」母音の攻略法。 - 烏は歌う
滑らかに歌うための、母音トレーニング法。 - 烏は歌う