息継ぎを「鼻から」するか「口から」するか迷うときには。


よく質問されることについて。


鼻呼吸、口呼吸のメリットとデメリット


・鼻から息を吸う
メリット…声帯にやさしい(変な力が入らない、喉が乾燥しにくい)呼吸が可能、腹式呼吸になりやすい、比較的静かに息継ぎできる
デメリット…多量の息を吸い込もうとすると、少々時間がかかりやすい


・口から息を吸う
メリット…瞬間的に一定量の息を吸い込むことができる
デメリット…胸式呼吸になりやすく、喉が力みやすく、乾燥しやすく、声帯にやさしくないし、変な音も鳴ってしまいやすい


という感じなので、ボイストレーニングの現場では「基本は鼻から吸う」「緊急的に口から吸ったり、口からも鼻からも両方吸うこともあるが、あくまで補助的」という感じで言われることが多いです。


声を使うときに「鼻呼吸」をする4つのメリット - 烏は歌う


あんまり意識しない、という考え方も


で、「絶対に鼻から吸うよう意識しなければならない」と教える人もいますが、最近はどちらかと言えば、


「吸気については、鼻からとか口からとか意識せず、そもそも積極的に『息を吸おう!』とせず、息を吐いた反動で自然に身体に空気が入ってくる感じでいよう」


という考え方が一般的になってきました。
吸気に意識を回しすぎると、不自然な吸い方になってしまいまいがちだからです。
例えば、息の「吸い過ぎ」であったり、「喉回りの筋肉の硬直」を引き起こしがち。
なので、吸気は「どのように吸うか」「息を吸おう!」と考えず、ただ合間合間で「力を抜く」ことが大事である、という風に教える人が最近は一般的だという印象があります。


肺から空気がある程度出て行った状態で力を抜けば、自然と必要な量が入ってきますし、それが「鼻から吸った方が自然」な場合は鼻から空気が入ってきますし、「口から吸った方が自然」な場合は口から空気が入ってきます。
鼻からか、口からか、悩むことは無いです。


息の吸い過ぎには注意、という追記。 - 烏は歌う
発声の前に、息はしっかり吸うべき? - 烏は歌う


「鼻か口か」の二元論に囚われてはいけないかもしれない


あと、
「息を吸うのは、鼻であるべきか、口であるべきか」
…こういう風に悩む人って、けっこう「問い」自体が間違っている場合があるわけでして。


「鼻から吸うのでは間に合わない!」という問題を抱えている人が口から息を吸えば、喉に変な力が入った、変な音のする、喉が乾きやすい、そんな「喉に悪い呼吸」になってしまうことが多いでしょう。
また、「口から吸ったら喉が変に力んでしまう!」という問題を抱えている人が鼻から息を吸えば、たぶん十分な空気を吸いきれず、なんか息苦しくなったり、次の発音に間に合わなくなってきたりするでしょう。


そういうわけで、なにか呼吸が苦しくなってるときには、「鼻からか、口からか」という以前の問題が起きている場合が多いです。
もちろん、鼻呼吸と口呼吸の切り替えでなんとかなる場合も無くはないけど、あんまり無い。


だいたいの場合は、
・自分の限界を超えた技術(超ロングトーン、早口、息継ぎ無しでのロングフレーズ、過剰なシャウトなど)をやろうとしている
・どこでブレスするかが定まってなくて、不安定
・変な力が入っていて、上手く息が吸えないor吸いすぎて力んでしまって苦しい
…って問題が起きていることがほとんどです。


なので、
・計画的に、無理のない息継ぎ計画を立てる
・基本的なブレスコントロール系のボイトレをやりこんで、「限界」を伸ばす
・ブレス時に余計な力が入らないように訓練する
ってのが大事です。


有名なボイトレ本から一言引用しますと、


“歌う力

“歌う力"をグングン引き出す ハリウッド・スタイル 実力派ヴォーカリスト養成術(CD付き)

P24
素晴らしい呼吸法とは、身体中に空気をめいっぱい入れようとすることではありません。例えて言えば、コップ一杯の水とプロフェッショナルなウェイターとの関係のようなものです。


というわけで、気の利いたウェイターのように、「空になる前に」「静かに」「いつの間にか」「必要な分だけ」空気を補充することを考えましょう。


また、ブレス系基礎トレとしてはこの辺とか。


ブレスの具体的なトレーニング方法。 - 烏は歌う
呼吸トレーニング、レベル別Tips。 - 烏は歌う


いわゆる「発声の支え・息の支え」というやつについて


そういえば、「いかに息を吐くか」についてのトレーニング法は色んなところで見られますが、あんまり「いかに息を吸うか」というトレーニングってあんまり見ないですよね。


それが何故かというと…
・しっかり「力を入れて」吐くことができれば、力を抜いた瞬間に多量の息が反動で戻ってくるので、吸う練習は必要ない
・しっかり「力を入れて」吐くことができると、吐く息の量が安定して、むしろ未トレーニング時より少量の息で発声できるようになるので、吸う練習は必要ない
という感じですね。


こういうことが実現された発声を、俗に「支えのある発声」と呼びます。
「支え」さえしっかりしていれば、口で吸っても鼻で吸っても特に問題はない(鼻からの方が色々喉にやさしいけど)って感じかと。


発声の「支え」ってなんなんだ - 烏は歌う