「お悩み」の表現の仕方。


最近忙しいのでなかなか更新できないなか、なんとなく考えていたことなど。


「お悩み」の表現の仕方


自分の声の悩みについて考えるときには、


・具体的に、どのような問題があるのか?


・どのような「事実」「現象」が起きているのか?


というのを最初に考えたほうがいい。


「○○な感じがする」とか、「○○な気がする」とか、「腹から声が出ていない(と言いつつ、腹から声が出るとはどのような状態で、どのような基準で出ていないのかを具体的に説明できない)」だの「喉から声が出てる(と言いつつ以下略)」みたいな、曖昧な事柄を「問題点」としてしまうと、解決は遠ざかってしまうことが多い。
どんなに正しく努力しても間違った答えが出てしまうときは、だいたい「問題」そのものが間違っているのである。


というわけで、具体的なアクションの出発点はできる限り「計測、記録が可能なもの」の方が良い。
「問題提起」というか「悩みはじめるきっかけ」というのは、どうしても「感想」という曖昧なものになってしまうことは仕方ないのだけれど、「じゃあ具体的にどうしようか」というのを考える前には、「感想」ではなくそこに起こっている「事実」「現象」をまず観察してからじゃないと難しい。


というわけで、例えば「喉に力が入ってしまっている気がする」という「感想」を抱いたときに、


・それによって、具体的にどのような問題が起こっているのか?
→声の高さ、音程の正確さや、出すことのできる音域・出しやすい音域はどのように変わったか?
→声の大きさ、声量はどのように変わったか?
→声質はどのように変わったのか?
→→「声質」というと若干曖昧なので、「母音の深さ・広さ」と「息のまじり具合」に注目して変化を見てみよう


…とか、こんな感じで1回掘り下げられると、「やるべきこと」が見えやすい。


ボイストレーナーとしては、その辺の「感想」を多く引き出しつつ、その中から具体的・客観的事実、現象を探り出す能力が求められる。
これはネット上の相談だと非常に難しいというか無理に近い場合が多い。
「感想」は付き合えば付き合うほど面倒くさいんだけど、重要な手がかりが隠されていることもあるし、あんまり蔑ろにすると相手の心が離れてしまうので、面倒くさいんだけどしっかり向き合わなければいけない。


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ボイストレーニングについて考えるときの、3×3通りの視点。 - 烏は歌う


間違った問いを出してしまいやすいポイント1


ボイトレ業界でよく言われている(ディープな人ほど嫌う言葉でもあるが)、
「腹から声を出す」
「頭に響かせる」
「喉を開く」
「全身を完全に脱力させる」
とか、これ系の言葉(私的には「発声ジャーゴン」と呼んでいる)は「事実」や「現象」ではなく、「感想」…というよりは「比喩表現」とか「お題目」とかそういう類の言葉でしかない。
しかし、人口に膾炙しすぎて、これがまるで「事実」のように扱われがちなのがなかなか問題。


「喉が開いていない」と思ってしまったときは、「じゃあ何故、喉が開いていないように感じてしまうのか、具体的に何が起こっているのか」というのをもう一歩だけ考えなければいけないのに、「喉が開いてないからダメなんだ!」というところで納得して思考停止してしまいがち。
でも、過去になんども書いたように、「喉が開いていないように感じる」原因も症状も山ほどバリエーションがあるわけで、ただ「喉が開いてないからダメなんだ!」ってところで立ち止まられちゃうとなかなかどうしようもないことが多い。


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「喉を開く」について、再度まとめ - 烏は歌う
気になるところから、徹底的に目を逸らしてみる - 烏は歌う


間違った問いを出してしまいやすいポイント2


あとはまあ、人間であるかぎり、自分自身のことに関しては間違った問いを見い出し続けてしまうことは仕方ないのかもしれない。にんげんだもの
人間ってのは、とにかく「自分」というものを「客観的」に見ることが難しいからだ。


「実際には、こうである」というのより、「こうであってほしい」「こうだったら嫌だなあ」という願望を元に世界や自分を見てしまうのが人間である、と昔から偉い人はだいたい仰っているわけだが、そういう仕組みで「事実」を見るのは本当に難しいということは肝に銘じておくべきであろう。


そして、極力「ツール」を通して「事実」を観測するのが大事だし、信頼のおける先生に直接声を聞いてもらうことがとても重要。


ツールの話


最近はスマホアプリでも色々あって、チューナーやら音量計みたいな定番ものから、高音質録音・再生速度変更やらの便利ツール、さらにマニアックなところだと倍音成分表示できるアプリとかまで探せばあって、スマホひとつで考えうるツールは全部揃うような時代になってんのかもしれない。
これはできる限り有効活用するべきだと思う。
ただ、道具は結局「使う人間の知識と能力」がなければ役に立たないので、そっちのアップデートをし続けてるうちに必要に思ってきたものを揃えていくペースが良いと思う。


あと、簡単で原始的だけど効果的な声のチェックツールとして、
・ゆっくり、地声の最低音から裏声の最高音まで、グリッサンド(一音一音区切らず滑らかに繋げて)で上がり下がりしてみる
という発声練習フレーズがあります。
これを色んな音量や声質でやってみる。


これが問題なくできるようなら、「とりあえず問題は無い、ということにしといていいかな」くらいの難易度の練習です。
問題が起きたら「どこで、何が起きたか」をしっかり観察すると、やるべきことが非常に見えやすい。