ステージには魔物が棲んでる。


アニメ、アイドルマスターシンデレラガールズの6話が一部で話題ですね。
というわけで、週の頭から泥酔エントリー。
勝手に書き殴る系エントリーなので、あらすじ等は興味持ったら各々調べる方針でお願いします。


魔物が棲んでる


ある程度、ステージに上がったりする活動をしたことのある人には、ものすごくリアルなお話だったんじゃないかと思います。
というか、私自身が、未央に自分を重ねてしばらく興奮で眠れなくなってしまったのですが。


逆に、あんまりそういう活動したことのない人には、ラストのあの反応はわかりにくいんじゃないかなー、と思ったり。
ある人曰く、「客が思ったより入らなかったからって、モチベーションが変わっていいのかよ」と。
また、ある人曰く、「客が少ないからがっかりするのはわかるけど、満員状態よりやりやすいんじゃない?」と。
さらにある人曰く、「最初ちょっとがっかりしたところで、アイドル目指すくらいの子達なら、気合いを入れ直してすぐ立て直せるべきなんじゃないの?」と。


いやね、全然違うんだわ。
よく、アーティストってライブのMCとかで「会場の皆さんのパワーを貰いましたー!!」みたいなことを言ったりするけど、これってファンサービスのための嘘なんかじゃないのよ。
ステージに立って、大勢の観客からのポジティブなリアクションが返ってきたときって、実際にすごいパワーを貰えるのよ。
本当にもう、なんでもできそうな気分になってくる。
生きててよかった!と叫びたくなる。
自分の実力を遥かに超えた力がでちゃうこともある。
で、そういう状態でパフォーマンスが上がる→客のリアクションもよくなってくる→さらにパフォーマンスが上がる…みたいにどこまでも高め合える感じがするのが良いライブ。
こういうライブの快感というのは一度味わうと二度と忘れることはできないものです。


逆に、「客、少なっ!」とか「ノリ悪くない?」とか「客のこととかどうでもいいや…」などと思ってしまうと、完全なダメスパイラルに入ってしまうことが多いのよ。
そんな想いからパフォーマンス下がる→客のリアクションが悪くなってくる→それを見てさらにパフォーマンスが下がる…みたいな。
こうなるとね、もう本当に「生きた心地がしない」レベルまでメンタルがやられるんだよね(経験談)。
しかも、この負のスパイラルはそう簡単に跳ね返せるものじゃない。
相当な場数を踏んで経験を積み、ひっくり返すためのアイデアをいくつもストックし、それを実行するための信頼を自他に持つ…なんて芸当を身につけないと、物事が悪い方に転がるのを止められませんし、芸歴長くてもちょくちょく失敗します。
ニュージェネ三人の表情がどんどん曇ってくる姿を見て、自分の過去の苦い経験を思い出し、胃がキリキリしてきた視聴者の方も多かったのではないでしょうか。


またね、その前後のちゃんみおの反応もまたリアルというかなんというか、「なんかこれ経験ある!」といった感じでした。
まず、ステージ直前の、なんとも言えない地に足のつかない感じ。
あれかな、相変わらず不安とかも持ってたのを、前回の良い記憶で無意識に塗りつぶしちゃってたのかな。
そして、ステージに立った瞬間の違和感、ショック、失望感。
熱狂の渦に迎え入れられた前回とはあまりに違う、手応えの無さ。
手応えが無い中でもがくのは、人間にとってとても辛いことだからね。
演奏中は、全員でなんとか立てなおそうとはしたのだろうけど、前回との落差があまりに大きく頭もフリーズしてるだろうし、仮に頭が回ったところで立て直す知恵も経験も友情パワーもまだない。
さらに上述の負のスパイラルによって自分のパフォーマンスもどんどんぎこちなくなっていく、とてつもない恐怖感。
前回できていたはずのことが全くできなくなっている驚き、焦り。
そして、演奏が終わったときに感じるのは、とにかく「恥ずかしい」パフォーマンスをしてしまったという気持ち。
見に来てくれたお客さんに対しても、同じ道を歩む仲間たちにも、そして何より自分自身に、恥ずかしい。
で、ものすごく自分を責めるんだけど、矛先を全部自分に向けると洒落じゃなく死んでしまうので、いけないことだと知りながら、まわりに怒りをぶつけてしまう。
「慰めて欲しい気持ち」と、「責めて欲しい気持ち」が半々で、どっちをされても反発してしまう理不尽な若さ。


ちゃんみおは頭の良い子だから、自分で気づいたのだと思うのです。
今の自分達の実力が本来これくらいだということも、勝手に理想を高めて勝手にギャップに転げ落ちたのは自分だということも、新人のライブとしてはまあまあ「普通」に成功の部類に入る公演だったことも。
でも、だからこそ、「慰めの言葉」を受け取ってしまえば「理想と現在のギャップを感じる自分の正直な気持ち」や「一度は半歩だけ到達できた理想の状態の記憶」を殺してしまうことになるし、かと言って「責める言葉」を受け入れられるような余裕があるわけではない、どっちにせよ何か言われれば弾け飛んでしまう状態。
だから、何もかもシャットアウトして、逃げ出さなければいられなかった。
だれか助けてくれと言いたくもなるけど、徹底的に自分の問題だということはわかっているから、助けを求めるわけにもいかないんだ。


…そんな経験、ない?
俺は何度もある、というか、未だに打ち上げで「うまい酒」が飲めないことの方が多いよ。
自分自身のできなかったこと、やりたかったことが頭を支配して、そんな中で「こういうリアクションを客の誰かがしてくれればなあ」「同僚がもう少しこういうことをしてくれたらなあ」みたいな考えも、どうしても頭をよぎってくる。
そんな自分が情けなくて、さらに泣けてきてさ、そんな日の酒は塩っぱい。
私の場合は、客がどうこうより、ずっと一緒に音楽やってきたやつらとの温度差とかでぶっ壊れそうになってるのがここ数年の問題で、本当に辛い。


こういう「理想と現実」のギャップにボロボロになって、それでも現実に満足しない姿って、きっと「何者か」になるための条件だから本当に頑張れ。
…などと、自分に言い聞かせながら、なんとか生きてる。
今の自分のレベルから見て「普通」の成功が得られた、というのは全然「普通」じゃない、とても奇跡的なことなんだけど、それでも「普通」じゃダメなんだ。
最高を求めて終わりのない旅をするのは、きっと僕らが生きている証拠だから…という歌を、辛くなると思い返す。


魔物との付き合い方


客が少ない、盛り上がらない…で自分たちのテンションも落ちてしまうというのは「ステージあるある」の代表的な一つですよね。


そういう時の対処法は、これといった決まりがあるわけじゃないけれど、基本は
「お前はいったい誰に、お前の表現を届けたいのか」
というのを思い返すことだと思います。


お客様を漠然と「数」とか「雰囲気」として捉えちゃうと、どうしても「遠い存在」とか「他者」になってしまいがちなので、しっかり一人一人を見据えて、目の前にいる一人の人間を相手に、笑わせたり泣かせたり踊らせたりしようとすることであったり。
いっそ目を閉じて、客席に「自分にとって最も大切な人」を思い浮かべて、その人とのコミュニケーションを想像しながら歌ったり。
そういう「伝えたい相手」を強く意識することが必要だと思います。


(アニメ3話ではあんなに観客席を映してたのに、6話では全然映さない…という演出だったように感じたけれども、今の三人には「これができてない」という意図かもしれない、と私は受け取りました。これっていわゆる「雑草育ち」だと最初に身につけておいてしかるべきスキルなんだけど、彼女らいちおうシンデレラガールズだからね。あと、ラブライカ組の方はこういうコミュニケーションができることが、実は4話のビデオ撮影回で証明されている気もした。)


そうすると、客の反応も少しずつ良くなってくるものだし、夢想的な理想のあり方ではなく「一期一会・一座建立」という、突然「その時・その場」にだけ現れる楽しみ・理想というものが見えてくることがあるんだよね。