雑な図で見る、声帯が鳴る仕組み。

声帯の開閉


「声帯の二枚のヒダが開閉することで、音がなる」
というのは、けっこう広く知れ渡っていますね。


で、たまに聞く勘違いが、
「声帯の二枚のヒダが開閉することで、”ぶつかり合って”音がなる」
という勘違い。
これは間違いですよー。


声帯がぶつかり合っても、それはいわゆる「エッジボイス」や「ボーカルフライ」とか言われる、「ガラガラ」というか「バチバチ」という感じの音しかならず、一般的な意味での「声」の元の音にはなりません。


疎密波


じゃあ、どのように声帯で声の元になる音が鳴っているかというと…。


イメージしてみましょう。
一本の廊下を、等間隔に人が歩いています。
その通り道に、「一定間隔で開閉している扉」があります。
では、人の流れはどのようになるでしょう?


※矢印描き忘れたけど、下から上に向かって赤球が進んでいるものと思ってみてね!



扉が開きっぱなしだと、流れは一定ですが、



扉が閉じると、扉の手前は渋滞しますし、扉の奥には一時的にだれもいないスカスカ状態になります。



で、また扉が開くと、扉でせき止められた人が一気に出て行って、その後しばらくはまた元通り一定の流れが続く。


…という感じ。


そういう感じで、声帯が開閉することで、空気の「圧力」にムラ=波、振動が生まれるわけです。
声帯で一瞬だけ息の流れがせき止められることで声帯直下の圧力が高まり、逆に声帯直上の圧力は低くなります。
これによって、息の「圧力」に、圧力高い(密)→圧力低い(疎)→圧力高い(密)→圧力低い(疎)…という「疎密波」が起こるわけですが、これが声帯で鳴る「声の元になる音」の正体。


扉同士がぶつかり合っている音が重要なのではなく、扉の開閉によって流れにムラができていて、その波が声という音の元になるのです。


ベルヌーイ効果


で、その声帯の開閉についてですが、人間が自分の意思で開閉しているわけではありません。
そりゃあ、一秒間に数百回も等間隔に開閉するとか、人間の神経で追いつくわけもないし。


で、声帯が「なんで閉じるか」というと、「ベルヌーイ効果」というやつのせいです。
ベルヌーイ効果とは、簡単に言うと、

空気や水の流れがはやくなると、そのはやくなった部分は圧力が低くなります。はやく流れるほど圧力は下がり、まわりの空気や水が流れこみます。

という物理現象です。


空気や水の流れのひみつは? | 札幌市青少年科学館



で、声帯に於いては、声帯の二枚のヒダが近寄ることによって、当然その部分が狭くなり、狭くなった分だけ空気が通り過ぎる速度は速くなります。
なので、ベルヌーイ効果によって、その声帯をさらに狭め、閉じるような力が発生します。



で、このようにして声帯が閉じれば、今度は声帯直下に溜まった空気が、声帯を押し開くような力を生みますね。
これによって、声帯は開閉します。


音量と音高


で、「高い声を出したり、大きな声を出したりするのに、大量の息は必要ありませんよー(少なすぎてもダメだけど)」というのを最近なんども書いているのですが、それについて改めて。


(声帯レベルでの)音量は、空気の流れの疎密波の振幅、つまり「空気が密な部分と疎な部分の圧力の差」によって決まるわけです。
「息の量がものすごく多くても、垂れ流してしまって圧力に差がつかなければ、声量は生まれない」
「息の量がある程度少なくても、ちょうどよく声帯を閉じてきっちり圧力に差を作ってやれば、大きな声量が生まれる」
という関係になっているからです。
だから、声帯に制御できないレベルでの無駄に多い息の量だと、むしろ声量だせなくなっちゃうよー、と。


また、声の高さについては、「声帯が一定時間に何回開閉するか」によって決まりますので、息の量は全く関係ありません。
なので、
「息を大量に吐かないと高音が出ないというのは、なにかが間違っている可能性が高い」
「むしろ、声帯をスムーズに振動させやすい程度に少なめの息、小さな音量の方が高音が出しやすい場合も多いので、そうならない場合はなにかが間違っている可能性が高い」
という感じ。