「喉の力を抜く、喉の力が抜けていない」という話について。


ここしばらくはなかなかブログに割ける時間が少なく、またコメントに気づかないことが多くなってきたので、コメント欄クローズしてFAQ的なまとめエントリーでも作ろうかなーと思い始めてはや一年。
今年こそはやるかもしれない。


「喉の力が抜けているのでしょうか?」的な質問について


上手くなりたければ、もしくは問題を解決したければ、こういう質問はしてはいけないし、こういう質問をされても答えようがありません。
と、私は思います。


…というのも、まず「喉」というのが、いくつものパーツから構成される器官ですので、喉の「具体的にどの部分」のことを話しているのかわからないからです。
「喉に力が入ってる」って、その力が入っているのは声帯なのか、喉頭なのか、咽頭なのか、軟口蓋なのか、舌なのか、顎なのか、唇なのか…によって、何がどうなって、何をどうすべきなのかは全く違うからです。


また、「力が抜けている=いい発声」というのも、指導としてはやや無責任な指導ですし、「完全に力が抜けている状態が理想の発声」というのも誤解を招きやすい表現です。
というのも、本当の意味で100%どこにも力が入っていなければ呼吸もできないし、立ったり座ったりしていることもできないし、声帯を近づけることができないので声は出せないからです。
もちろん、「余計な力」は入れない方が絶対にいいんだけど、余計でない適度な力は絶対に必要なわけで。
このブログで何度も書いているように、「程度問題」なんですわ。


チェックの方法というか


とりあえず前のいくつかの記事では、
「3オクターブ前後の声域を、できる限り滑らかに繋げて出せるようになること(ミックスボイスの実現)」ができていれば、とりあえずだいたいのバランスは取れていると言えるかな、
と呼吸・声帯・共鳴の三点について書いてきましたが、だいたいこんな感じです。


それができないようなら、どっかで力が入りすぎてたり、抜けすぎたりしてるはず。
逆にこれができていれば、外見上どっかに力が入っていたり、力が入っているような感触がしたり、逆に力が入っていないさそうに見えたりしても問題は無い。
「いい声を出すために力を抜く(必要があるときもある)」わけで、「力を抜かなきゃいけないから力を抜く」という風になってはいけない。


ただまあ、初心者に急にボイトレやらすとガッチガチになっちゃうことが大半なので、「まず力を抜け」ってのは理がないわけではないんですけどね。
特に胸、肩まわりの緊張は「極度に緊張した音色」を表現したいときを除いては害が大きすぎるので、まずその辺の脱力から入るのは定番ではあります。


また、漠然と「喉の力を抜け!」というボイストレーナーはやっぱり何かおかしいので、できるだけまともな先生と出会えるよう頑張るのも大切です。
まともなボイストレーナーなら、「喉」なんて漠然とした範囲ではなくもっと具体的にどこがどうなっているのか教えてくれますし、また、「力を抜け」なんて漠然とした指示ではなくもっと具体的な方法(姿勢やら呼吸やら、だけではなく母音の扱いとか効果的な舌や顎のストレッチ方とか)を教えてくれるはずです。


ありがちな勘違い1


「きちんと脱力して、理想的な発声ができていれば、どんな高い声も出せる!」
…というのは、さすがに幻想ですし、限度があります。


音域関係は何度も書いていますが、
・人間がチェスト〜ヘッドボイスを無理なく使って出せる生理的な限界はだいたい3オクターブ前後
(声が低い人ほど音域は広く、声が高い人ほど狭いので、ベース系の男性は4オク近く出せたり、ソプラノ系女性は2オクちょっとしか出せなかったりもしますが、ほとんどの人はこの辺に収まります。)
・それ以上の高音を出すとなると、いわゆる「ホイッスル」などと呼ばれる特殊技能が必要
って感じの認識でいるといいと思います。


最高音がこんな感じになっちゃうんだけど、生理的な限界なんでしょうかただの「力み」のせいなんでしょうか…みたいな質問をよく受けますが、まずは最低音から逆算しましょう。
また、人間の声域って基本そこまで個人差があるわけではないので、近いタイプの人と比較しましょう。
○○みたいな高音はどういうことなの!?みたいな質問もよく受けますが、それは単にむちゃくちゃ最低音も最高音も高いタイプか、無理して出してるか、ホイッスルなどの特殊な技法を使っているかのどれかです。


ありがちな勘違い2


「きちんと脱力して、理想的な発声ができていれば、どんな大きな声も出せる!」
…というのは、さすがに幻想ですし、限度があります。


基本的にはチェストボイスの真ん中〜高めくらいが一番声量出せますし、脱力しなきゃ出せない低音や、振動体が薄く小さくなるミドルボイスやヘッドボイスはどうしてもチェストボイスより声量落ちます。
これは物理的、生理的に仕方ないことです。


ありがちな勘違い3


「きちんと脱力して、理想的な発声ができていれば、どんなに歌っても疲れない!」
…というのは、さすがに幻想ですし、限度があります。


もちろん力が抜けていた方が疲れにくいのは事実ですが、あなたが「脱力」できないから疲れているのではなく、疲れているから「脱力」できていないんだ、という感じの人は過去に何度も見てきました。
どんなに理想に近い練習環境でも、一日に数時間とか、一週間合計で十数時間とか、そのくらい練習したら喉(声帯やそのまわりの粘膜も筋肉全般も)は疲労して消耗して当然だし、「違和感や痛みを感じる」なんてことはあり得なくはないです。
さらに、色々と整ってない環境だと、そこそこボイトレ経験してる人でも15分もあれば喉をぶっ壊せます。
雑多なメンバーと行くカラオケとか、素人サークルの合宿集中練習とかな。
なのでまあ、喉に違和感を感じたら「練習量でどうにかしよう」と考えると泥沼なので、ちょっと休みつつ練習の効率とか考えると良いです。