中級者以上向けの「倍音」の話。

いろいろとコメントが来ていたので。

初級者向けの説明


初級者向けの説明だと、
「声には倍音ってやつが含まれていて、それが声質とか声の印象とかを大きく左右するよー」
「基本的には、しっかり倍音が含まれていると明るくはっきりした印象になって、いい声と言われやすくなるよー」
倍音をきっちり鳴らすには、声帯をストレスなく鳴らすことと、声を喉や口でしっかり響かせることが必要だよー」
というくらいで済ますのがまあ妥当かなー、と思います。


中級者以上にありがちな困難


しかし、中級者レベルになってくると倍音の話をするのって非常にめんどくさいことになりまして。
というのも、以前こんな記事を書いたことがあるんですが…。


「丸い響き」とか「柔らかい響き」とか。 - 烏は歌う


中級者くらいだと、「倍音がたくさん鳴ってるといい声らしい!」みたいなことを聞いてはいるんですが、「どのような倍音が多いとどのような声質になるのか」という対応関係が整理できていない場合が多いのです。
なので、
「私がこれはいい声だと思ったから、これは倍音がたくさん含まれているに違いない!」
倍音の多い声とは、よくわからないけど私の好きなタイプの声である!」
「私の声が思い通りにならないのは、よくわからないけど倍音が足りないせいだ!」
みたいな考えに陥りやすい。


倍音を強くしたいんです」と言われても、「基音も強く、だからこそ倍音もすごく強い、明るく派手な輪郭のはっきりした声(倍音の絶対量が多い声)」を目指している場合もあるし、「基音があんまり聞こえないで、倍音というか響きだけがふわっと鳴ってる感じの透明感のある声(倍音の割合が多い声)」を目指している場合もあるしで、そのアプローチ方法って真逆だから、どっちのことを意識してるのかとかから考えないといけない、とか、考えないといけないことが山積み。


倍音の単純な増やし方


基本的には、倍音の量は基音の強さに比例します。
基音が鳴るとそれに付随して倍音が発生するわけなので。


なので、声帯を無理なく鳴らし、その音が響きやすい状態の共鳴空間を作ってやれればいいわけです。


声帯に関するイントロダクション。 - 烏は歌う
共鳴に関するイントロダクション。 - 烏は歌う


倍音の偏らせ方


で、中級者以上に必要になってくるのは、倍音の単純な増やし方ではなく、
「どのような形の共鳴空間を用意したら」
「どのような倍音が響きやすくなって」
「どのように声質が変わるか」
について理解することです。


いわば「倍音の偏らせ方」というか。


そこでヒントになるのが、「母音の変化」です。
世の中にはいろんな母音がありますが、なぜ我々人間が母音を出し分けたり聞き分けたりすることができるかというと、「舌や口の形などを変えることで倍音構成を変えて、母音ごとに声の質を変えている」…ということが無意識に行われているからです。
「い」母音はなんとなく他の母音より硬くて明るいというかキンキン響くイメージがありますが、それは「い」の口をすると、高い倍音が強調されやすくなり、低めの倍音はカットされやすくなるからです。
逆に「お」母音は他の母音より柔らかくて暗くてマイルドなイメージがありますが、それは「お」の口をすると低めの倍音が強調されやすくなり、高めの倍音がカットされやすくなるからです。


母音関係まとめ - 烏は歌う


このような関係を頭に入れて、出したい響きを実現させられる口内の「広さ」と「深さ」を調節してみることが、理想の声に近づく方法となるでしょう。